第7話 それにはご用心

 マニケラトプスは男の姿を取る者の元へ緑の本をくわえて来た。手に取った本を開くと、彼はその輝く『真の知』を満足げにのぞく。そして、やがてかたわらの同じ表紙の本の上にそれを積み上げた。

 途端、それらはバベルの塔の如く崩れ、マニケラトプスはトリとなってリアルブックを整える。


「さて、今度は何を加えるか」


 呟く声の降る足元でトリはさけつぼへとかえった。

 くしかみには無数のファンキーなミミズク達が見える。

 あるR.B.ブッコローは横浜のカフェでクリスピーチキンを頬張ほおばっていた。それは店員に度量を見せるための散財だ。パイヤードステーキ他、酒肴しゅこうが並ぶ。彼はエスニックレモンサワーをあおり、エルダーフラワーモヒートのグラスを傾け、葡萄酒ワインを楽しんだ。それから、麦焼酎とワッフルのオーダーが入る。


「次の死者使者は彼にしよう」


 酒の司は薄く笑った。彼は酉を酎酒三度かもす酒で満たす。すると、容器は消失し、カフェの厨房ちゅうぼうに焼酎の瓶が現れた。

 ブッコローはその中身を注がれ、機嫌よく酒を味わう。


 今、眠り込んだブッコローは照明の落ちた店内で「お忘れ物」の紙を貼られていた。カフェの片隅でボトルはトリに姿を変え、残っていた酒は長く鋭い金属となって、その羽に握られる。

 トリは何かをくしさすかに身構えた。


<了>


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異世界YouTudoの加美 小余綾香 @koyurugi

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