電波ヒロインにはチャラ系秀才を⑤

一週間後。


俺は、結局イベント発生地点に来ていた。

どうやらここでミアとルーファスが偶然出くわすらしい。

なんか、声を掛けられて云々。

結局、主人公が警戒して、逃げるっていうのが今回のイベントで、問題ないっちゃあ問題は無いのだが……。


「……」


そう思っていながらもこの場を離れることができず、そこを見張っていると、ミアが向こうからやって来た。

ミアは、キョロキョロとあたりを慎重に見回しながらも、その場を動く気配はない。

……あいつ、結局攻略を進めるのか。


そう思っていると、向こうからルーファスが歩いてきた。

ルーファスは一人だが、何やら期限が悪いらしい。

顔をしかめながら、どたどたと歩いてくる。


そしてその目にミアを入れると、途端にニヤついて近づいてくる。


「お、学年一位ちゃんじゃん!こんな所で会うなんて偶然だよね!」


ミアは、ノート通り、ルーファスを見て、怪訝そうな表情を浮かべる。

ただ、それは本当に嫌がっているだけかもしれないが。

そんなミアを見て、ルーファスはムッとした表情を浮かべる。


「ちょっと、何?なんかあるの?」


そういうルーファスにミアは台本通り返す。


「いえ、この前、あんなことがありましたから」


途端に真顔になるルーファス。


「それじゃ、私は行きますから」


そう言って、去っていこうとするミア。

しかし、その手を掴まれる。


「えっ……」

「あのさぁ。男爵ごときが俺に逆らってどうするのさ」


台本とセリフがずれた!?

この前、ずれた影響か?


「俺の言う事聞かないと、家が大変なことになるよ~!」

「!」


そう言われて、振り払おうとしていた腕が止まる。


「分かった?俺よりも弱いくせに、粋がるんじゃないの。ほらついてこい」


そう言って、連れて行こうとするルーファス。

ミアは、逃げるに逃げれない状況に、固まってしまっている。


「い、嫌!」

「はぁ?これ以上、何か口答えする訳?」

「っ!……」

「へぇ、そんな表情もできるんだ」


そう言って睨むミアをにやけた目で見るルーファス。

……これのどこが恋愛物語のヒーローなんだ?

しかし、動けない。

いや、動くべきか分からなくなってしまった。


……これが彼女の望むことなんじゃないか?

一回ぐらい、痛い目に遭った方がいいんじゃないのか?


俺はどうすべきか迷っていた。

その時だった。

彼女の口が小さく動いた。


〈た、助けて……ターナー〉


……何をやってんだ俺は!

騎士として、しなけりゃいけないことなんて決まってただろうに!


俺は、潜伏場所から飛び出した。


「おい、待てよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る