ほくろの位置まで、覚えてる。

 主人公の大学生は、臨床心理士を目指して学問に励んでいた。大学生らしくバイトも怠らない。実家の母親からは春休みくらいは帰って来るように、電話で促されていた。父親まで、仕送りを増やすからバイトは二の次にしろと言う。彼女と一緒に帰ることも期待されながら。そんな心配性でお節介の家族を振り切って、主人公は大学に通う。
 主人公には忘れられない人がいた。小学校の時にクラスメイトだった男の子だ。苦いバレンタインデーのチョコの思い出。そして引っ越して連絡先も分からないままに離れてしまったことを悔いる日々。水泳の時に見た、彼のほくろの位置まで覚えているのに。
 しかし、主人公と彼はこの後——。

 胸の内は、声に出すまで分からない。
 そうであってほしいと願う主人公と、彼の関係が文章全体から香り立つ。

 是非、御一読下さい。