サブストーリー

夏の味

 窓の外は見事な夏空。そんな中、クーラーで快適温度を維持した室内でキンキンに冷えた麦茶を飲むと、そこはかとない幸せを感じる。

「この麦茶、そんなに美味しいですか?」

 俺の手からコップを奪い口をつける環。うん、と軽く頷いて夏の味がすると笑った。そんな彼の手元には濃いめのカルピス。

「どっちがより夏っぽい?」

「んー、こっち」

 軍配はカルピスに上がった。その笑顔に幼さを感じ、問答無用で緩み始める口元を慌ててコップで隠す。ぎこちない動きから何かを読み取ったらしい環は、不服そうにコップをテーブルに置いた。

「また幼いって思ったでしょう?」

 麦茶がまた奪われ、代わりに彼の手が重なった。

「可愛いって、思ったでしょう」

「ダメなの?」

 反論するときは必ず伏し目になるその姿も……。

「ダメです」

 俺の太腿を跨ぎ膝の上に乗る君は、心なしかいつもより温い。

「自分は年下ですけど、誠さんに見合う彼氏でいたいから」

 彼氏。その甘い響きに疼く情熱。クーラーの温度を下げたくなったが、ソファに体を縫い止められそれは叶わない。

「教えてください。大人になる方法」


 環、俺は君の思うような立派な大人じゃない。だってほら。君の可愛い強がりに負けて、これから汗だくになる予感しかしない。

 重ねた唇から、甘い夏の味がした。

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Baby, Tell Me You Love Me. 木之下ゆうり @sleeptight_u_u

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