第14話 ゲームを企画する時は「誰をどのように喜ばせたいか」具体的に考えるのが大事

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 ・どのターゲット層に売り込むかで、企画内容が変わる。

 ・ターゲットを意識することで、企画の”ブレ”がなくなる。

 ・「誰をどのように喜ばせたいか」具体的に考えよう。

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 ■企画をどのターゲット層に売り込むか


 ノベルゲームに関わらず新しく企画を立てる際には、この企画をどのターゲット層に売り込むか」考える必要があります。


 例えば「新しい味のスナック菓子を作る」企画があった場合、幼稚園児がターゲットならスナックを甘い味付けにして戦隊ヒーローなどの人気キャラをパッケージに採用します。

 二十歳以上の大人がターゲットなら刺激が強いペッパー味を採用して、お酒に合うおつまみ感覚のスナックを売り出すでしょう。


 スナック菓子と同じで美少女ゲームも、純愛もの、寝取られもの、人妻ものなど、狙うターゲットによって企画の中身が変わります。

「ライト層向けに純愛モノを作る」というコンセプトなのに、ハードSMを作っても成果は上がりません。

 広報担当やプロデューサーとも話し合い、企画と対象ターゲットが合致しているか確認しましょう。




 ■ライト層向けは、売れ筋を意識する


 ライト層向けの作品を企画する際は、ネタのわかりやすさと、取っつきやすさを重視しましょう。

 一般的に「恋愛ゲーム=学生同士の恋バナ」という認識は根強いです。ライト層向けの作品を作るなら『学園が舞台の純愛もの』は外せません。お菓子で例えると「ソース味のスナック」になります。


 デメリットとしては、王道故に競合他社が同じような作品を出すので、お客さん(ユーザー)の取り合いになります。企画の個性を出せないと、市場に埋もれてしまうでしょう。


 また、ライト層向けの作品は宣伝が命。ライト層は流行に敏感で「みんなが買ってるからオレも買おう」とブームに乗りやすい傾向があります。

 前回の記事で解説した『アピールポイント』が多ければ多いほど営業もしやすいでしょう。




 ■エッチなゲームにおける初心者向け作品とは?


 実写系アダルトビデオの愛好家が初めて18禁ゲームを購入する場合、「エッチなゲーム=アニメ絵のアダルトビデオ」という認識なので男女が合意の上でエッチする1対1の和姦ゲームが初心者向けになります。


(マニアックな性癖を否定しているわけではなく、一般的に受け入れやすい作品とは何か? というお話です)


 和姦でも、学生同士の恋愛、人妻もの、SMものやコスプレものなどジャンルは多岐に亘ります。ジャンルは掘り下げれば掘り下げるほどニッチな方向に進むのでさじ加減はよく考えましょう。

 扱うネタがマニアックすぎるかな? と思ったら素直にコアなファン層向けの作品にシフトチェンジした方が企画としてのバランスがよくなります。




 ■コア層向けは、ユニークさでアピールする

 

 コアなファン層、ゲームマニア向けの作品を企画するなら、中身がユニークでなくてはなりません。

 この場合のユニークは「独特な」「面白い」の意味が含まれています。


「自分のために作れたかのようなニッチな趣味を全面に押し出した作品」「ライト層には受けないが、いつまでも心に残るような意欲作」といった作品としての「深み」を追求したゲーム作りを目指します。


(ライトな王道作品のクオリティーが低いというわけではなく、ユーザー側の受け取り方の違いです)



 お菓子の例で考えるなら「四川風麻婆豆腐味のスナック」あたりでしょうか。

 子供は辛いのが苦手なので売り上げは見込ません。ですが、辛いモノが好きな一部のお子さんは泣いて喜ぶでしょう。




 ■マニアックな作品の爆発力

 

 ぱっと見で難解そう&ニッチな作品はライト層のウケが悪く、爆発的なヒットは見込めません。

 宮崎駿監督のアニメ映画は万人が見に行きますが深夜アニメの劇場版はマニアしか見に行きませんからね。


 ただし、ニッチな趣味を全面に押した作品の場合は、愛好家=固定ファン層が一定数存在するので売り上げ予想を大きく外すことはありません。

 小部数で勝負できる抜きゲー、同人作品やロープライス作品との相性がよいですね。


 また作品の評判がよかった場合、プレイしてからの口コミで後伸びします。 中身で勝負をかけられるのでロングヒットを見込めます。

 口コミで広がると「話題になってるなら見に行こう」とブームに便乗したライト層のファンが増え深夜アニメの劇場版にも「初見のお客さん」が入ってくることになります。そして気がつけば、マニアックだった作品がメジャーになるわけです。




 ■実例:幼なじみは大統領とクロデの場合


 私が企画した美少女ゲーム「幼なじみは大統領 ©ALcot」のターゲット層は、 18~25歳までの(美少女ゲーム業界的に)若年層でした。

 それまでは30歳以上のユーザーに受ける手堅い学園ものを出していましたが、 売り上げが低迷してきたので若者向けの作品を出すことにしました。

 古参ファンからは「ALcotが血迷った」という評価を受けますが「スナック感覚で遊べるゆるーいドタバタラブコメ」「大統領を女体化させたインパクトがあるネタ」というコンセプトが受け入れられて若年層を中心に売り上げを伸ばします。


 同じ世界観の作品を数本作ったあと10周年記念作品として「Clover Day's ©ALcot」を企画します。

「大統領で離れたファンを呼び戻す」「10周年記念だから処女作の”2”を作りたいが、続編にはしない」「30歳以上向け。派手さはないが、じっくり読ませる物語を」というコンセプトで企画をスタートさせました。

 大統領をプレイした若者もアラサーになっており30歳以上のユーザーに受ける手堅い学園ものに戻したわけです。


 10周年ということで古参のファンが戻ってきたのもあり、スマッシュヒットになります。コンシューマー版も発売されロングラン商品になりました(感謝)




 ■ターゲットを意識すると企画の”ブレ”もなくなる


 スナック菓子の例えにもあったように、幼稚園児向けと大人向けの商品では、味付けが異なります。

 とあるシナリオライティングの教科書に載っていましたが、「特定の読者を想定して書くとその作品はブレない」そうです。


 お菓子の例だと「親戚の○○ちゃん」という具体的なターゲットを設定することで

 その子が普段食べているスナックの味の好み好みのキャラクターから商品情報を絞りやすくなります。「○○ちゃんは塩味が好き。パッケージに仮面ラ○ダーを採用する」という感じですね。

 その他のターゲットを捨てることになりますが、「親戚の○○ちゃん」の好みと似たターゲット=固定ファンを取り込めるわけです。


 ターゲットを広く浅く設定した場合(ライト層向け)塩味が好きな子もソース味が好きな子もいるので、これといった『味の決め手」が欠けてしまいます。

 ですから、ライト層向けのお菓子を作る際は売れ筋を意識するわけです。

「統計的にソース味が売れている。次はソース味を出そう!」となるわけです。(そして市場にはソース味が溢れ、競争が始まる)


 美少女ゲームでライト層を意識するなら、ヒロインの服装や属性はバランスよく配置します。味付けが薄いですが突飛な設定もないので、安心してプレイできます。

 逆に「太ももマニアの○○君を喜ばせたいから服はハイレグのみ!」と、特定の顧客を想定して企画を立てると作品の味付けが濃くなります。「ハイレグなら買おうかな……」と固定ファンを取り込めるわけです。




 ■まとめ


 どのターゲット層に売り込むかで、企画の内容が変わります。

「誰をどのように喜ばせたいか」をよく考えて、企画内容の”ブレ”がなくなるようにしたいですね。





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 宣伝コーナー

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