第12話 企画のコンセプトはどうやって決めればいいの?


 前回は企画三本柱のひとつ、コンセプト=アプローチについて説明しました。

 実際に『コンセプト』を決めるには、どうすればいいのでしょうか?


 一番の近道は『テーマ』を分解したり掘り下げること。


「飛翔なら自衛官ものかな?」「未来なら流線型かな?」

 というように、内側から滲み出てくる『おもしろ成分』を、

 ネタに落とし込むことです。


 とはいえ、そんなポコポコとネタが湧いてきたら誰も苦労はしませんよね。

 というわけで、今回はネタ出しの『取っ掛かり』をいくつかご紹介します。


「これが正解」「こうしろ」というわけでなく、

「こういう切り口もあるのかー」と話半分程度にご覧ください。


 また、流行ってる、売れているからといって面白いとは限りません。


「このコンセプトは手掛ける企画のテーマに沿っているのか?」

「きちんと書きたい(創りたい)ものを書けているか」

 などなど、常に自問自答を続けましょう。




 ■コンセプトの例:ネタをパクれ


 いきなり怒られそうなフレーズがきました。

「パクれ」というと語弊がありますがインスパイア、リスペクトです。


 インスパイアとは、ひらめき。

 リスペクトとは、敬意を払うという意味です。


 尊敬する作家や作品に触発され浮かんだネタを使い、

 同じテーマに基づいて作品を創作する行為です。

「あの作品が好きだから俺も似たようなのを作ろう!」というわけです。


 手塚治虫先生も、ディズニー映画から技法や話作りを学んでいます。

 S・スピルバーグが黒澤明をリスペクトしてるのも有名な話ですよね。


 あなたが「いいね!」と思った映画、漫画、アニメ、ゲームのネタは、

 一度自分の中に取り込んだ上でアウトプットしましょう。

 (


 既存作品と同じようなネタを企画に起こすと不安になりますが、

『自分フィルター』を通した時点で別物に生まれ変わるのでご安心を。

 企画をこねくり回している間に『原型』は消えるものです。



 私が企画したノベルゲーム『幼なじみは大統領』では、

 インディペンデ○ス・デイなどの洋画の要素を取り入れています。

 アメコミ的、洋画風というアプローチで『アメ○カの大統領』というテーマを演出しました。


 大事なのは『テーマを表現するのにこのアプローチは適切か?」

 と問い続けること。

 理由もなくインスパイアしただけでは独りよがりな作品になるでしょう。


 またデメリットも大きいです。


 まず、参考にした作品を好まない層にはまったく響きません。

 どうしても元ネタが頭に浮かぶので、

「あの作品に似せよう」「あの作品は越えられない」と、

 自分から枷をハメてしまいがちで新しい発想が浮かびづらくなります。




 ■コンセプトの例 :二匹目のドジョウ


 インスパイアとは似て非なるもの。

 こちらは世間でヒットしている作品にあやかって、

 同じ芸風、同じ雰囲気の作品を作るアプローチです。


 商業的観点に立ち

「匂わせるのではなく、あえて似せていく」

「『戦車道』が流行ったので、我々は『潜水艦道』を出そう」という

(ある意味)安直な発想です。


 ですが、これが結構ヒットします。売れているモノには訳がある。


 ラノベ業界で異世界転生モノが広まったように、

 売れている作品は市場での受けもよく受けがいいから売れているのです。


 元になった作品に固定ファンがおり彼らにアピールしやすいのがメリットですが、

 期待外れだった場合(作品の質が要求基準を満たさなかった)は、

 元作品と比較されることになりまったく売れません。

 売れるモノをただ真似するだけでは企画はヒットしないわけです。



「あの作品はなぜ売れているのか。売れている要素はコレ。

 だから、ここを参考にする。ここは捨てて、新しいネタを……」

 など、売れている理由を分析&別要素を加えるなどして

 二匹目のどぜうを狙います。柳川鍋、美味しいですよね。



『幼なじみは大統領』は当時流行り始めていた

「艦コレ」「刀剣乱舞」からヒントを得て「擬人化」「女体化」ネタをヒントに、

(今となっては定番ネタとなっており、古く感じるかと思います)

「大統領が美少女になったらおもしろそう」という発想で作りました。




 ■コンセプトの例 :隙間産業


 二匹目のドジョウとは違い、こちらはニッチなネタでアプローチする戦略。

 流行り物はみんな真似をしていてユーザーも飽きている。

 そこで誰も作らないニッチなネタでコアなファン層を狙い打ちするわけです。


 たとえば(本当にパッと思いついただけですが)

『テレアポの受付嬢と"だけ"恋愛できる』ネタ。


 ターゲットを絞り込みすぎて売れそうにありませんが、今までにないネタです。

「売れそうにないけど俺は好きだよ?」というニッチなファン層にアピールするわけです。同人ゲームだと、この手の作品は多いですね。


 大事なのは、作る側も売り=ニッチな要素が好きであること。

 ニッチなファンほど審美眼は鋭いので適当に作ると見向きもされません。


「実は待っていた!」というサイレントユーザーが予想外に多かった場合、

 ダークホースとして謎のヒットを飛ばします。

 冷静に市場を分析し、次の企画に繋げたいですね。




 ■コンセプトの例 :○×△


 ひとつのネタではパンチが弱い。使い古されている……

 そんな時は、要素と要素を掛け合わせて化学変化を狙いましょう。


 美少女×タンクアーミー、美少女×戦艦。アイドル×ゾンビ

 ……という具合ですね。

 見える、ワシには何かしら大ヒットしたアレやコレやが見えるぞぉぉ!


 掛け合わせた瞬間に「これはおもしろそう」と判断しやすく、

 ネタとしても扱いやすいでしょう。

『幼なじみは大統領』も『美少女×大統領』の掛け合わせです。


 センスが問われるアプローチの仕方なので、

「ヒットしそうな匂い」を嗅ぎ取れないと爆死します。

 独りよがりにならず、周りの意見も聞きましょう。

 一部の人間しか評価しないならニッチな方向へ舵を切るのも戦略です。




 ■コンセプトの例 :過剰にしてみる


 これはアプローチというよりかはネタの広げ方になります。


「嫁ものを書きたい。そうだ、5人姉妹にして全員許嫁にしよう」

「妹ものを作りたい。妹が12人いたらドッタンバッタン大騒ぎだな」

「遠距離恋愛を描きたい。各都道府県に彼女がいるのはどうだろう?」

「主人公は格闘家……だとおもしろくないから、ガ○ダムに乗ろう」


 という具合に、元ネタを大げさに膨らませてインパクトを与える手法もあります。


 かなりの飛び道具なので

 そのアプローチがテーマに沿うかもう一度検討しましょう。


 例えば、

 1対1の純愛を心理描写を含めて詳細に描きたいのに

 12人の妹とのハーレム展開になったらテーマが破綻します。




 ■まとめ


 コンセプトとは、

 テーマを表現するためのアプローチ=切り口です。


 企画のおもしろさに直結する部分なので、

 試行錯誤を繰り返しましょう。


 コンセプト決めの判断基準となるのが、テーマです。

 テーマとマッチしないコンセプトで企画を進めると、ほぼ失敗します。




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