第12話 戴冠式の日そして聖女と呼ばれた日
教会の鐘が鳴り響き戴冠式が始まった。今目の前で私が見ている光景こそ私が戦ってきた意味でもある。
「あぁ貴方が……貴方様こそが祖国の希望……」
そう呟いた時先程感じた首筋に走る寒気がまた私を襲った。なに?この違和感、この嫌な予感は……そんな事を考えながら私は戴冠式を見届けた。
暫くして戴冠式が終わり私たちは教会を離れ仲間たちと兵舎へと戻りほんの少しだけ緊張感から解き放たれたようにワイワイと話し込んでいた。
「それにしても凄いよなリナは」
「あぁ。陥落寸前のハラルーニを奪還。そして王太子様の戴冠式も叶えたんだもんな…まるで聖女だ」
「聖女か……いいなこれからリナの事は聖女と呼ぼう!」
他の兵士たちの言葉に私はため息を吐きつつその様子を見ていた。私は神様の声を聞いてその通りにしているだけ。私自身特別なことはしていない……私はこの国が平和になってくれればそれだけでいい。
「聖女と呼ばれるのは恥ずかしいので名前で呼んでください」
私はそれだけを告げて自分の部屋に入りそっと胸の前で手を組んだ。神様……どうかどうか早くこの戦争が終わりますように。
そう祈ってから私はゆっくりと眠りについた。
フランシアの聖女 華柏(こはく) @kohaku_1105
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