第3話 追い詰められた


 ローカルニュースで元夫の名前を見た。内縁の妻に暴行したらしい。


 何も考えられなくなった。




 しばらくして、内縁だったんだ、と思った。ううん、それはどうでもいいか。


 女は妊娠していたはずだ。また他の女に手を出したのか。それがバレて揉めたのか。

 そりゃそうだ。元は自分がその浮気相手の方だったのに。なんで自分なら浮気されないと思う。

 乾いた笑いが喉からもれた。


 ううん、それもどうでもいい。

 それで子どもはどうなったのか。無事なのか。流れたのか。産むのか。養育する子は増えるのか。私に関係するのはそこだろう。

 

 だけど、それよりも。

 あの人には暴行の前科がついたんだ。クビになったりするだろうか。収入がなければ養育費ももらえない。


 あと、そうだ。

 父親が前科持ちになったこの子の将来は。






 ああ。そうか。

 捨ててあげたらいいのかも。

 この子が誰の子か、わからないよう。



 そして私はどこかの道端で、消えてなくなってしまいたい。







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