第32話 女神石

「お、お帰りなさい!」


 ジアリス町に帰ってくるとすぐにセレナちゃんが胸の中に飛び込んできた。


 柔らかい体の感触が伝わってきて、彼女の優しさが伝わってくる。


「せ、セレナちゃん!」


「あっ! ご、ごめんなさい!」


「「「「わはははは~!」」」」


 僕達を見ていたみんなが大笑いした。




「キャンバル様。空を飛ぶ魔法はいかがでしたか?」


「爺。問題ないみたい!」


 実はバルバギア王国軍が攻めてくるという事で、どうやって戦おうかと悩んでいたんだけど、その時に思いついたのが――――ヤンキーみたいに睨んだら帰ってくれないかなと思いついたのだ。


 急遽睨む練習とかもしたんだけど、ただ目の前に現れたのではまだインパクトが弱いと思ったので、色々悩んで結果的に映画とかアニメみたいに空から降ってきたらインパクトあるかな? と思いついた。


 何とかいろんな属性の魔法を足して引いて混ぜて抜いて、色々試したら空を飛べる魔法が使えるようになったので、そのまま空から登場してヤンキーみたいに睨みつけてやろうとして、やってみたら意外にも効果テキメンだった!


「バルバギア王国軍はどうなりましたか?」


「インパクトがあったみたいで、みなさん、ちゃんと逃げてくれたよ!」


 そう話すとみんなが安堵の溜息を一斉に吐いた。


「それは僥倖ぎょうこうでございました。どこかケガはしていませんか?」


「戦闘にもならなかったので大丈夫! それはそうと、こんな石を置いて逃げたんだけど、爺、これ知ってる?」


「ふむ……? いえ、初めてみます。文献とかでも見かけた事はないですね」


「う~ん。女神石と呼んでいたんだよね」


「「女神石!?」」


 爺の声ともう一つの声が。


「アクア様?」


「バルくん! 石を見せてくれ!」


「は~い」


 アクア様の前に石を持っていくと、目をキラキラ光らせて興奮し始めた。


 この様子…………あれだ。皇魔石を見た時と似た反応で、あの時よりも興奮している。


「間違いない。皇魔石の上。神魔石だね」


「神魔石?」


「ああ。魔石にもいろんな種類があるが、みんなが呼んでいる魔石は魔物の中から現れるだろう? だがあれも魔物の強さによって魔石の大きさが変わるだろう? 魔石が大きければ大きい程、中に込められている魔力量は増大するんだ。皇魔石は魔石の中に込められた魔力の濃度が圧倒的に高いモノで、色も変わってくる。言わば普通の魔石の上位版が皇魔石だよね? 神魔石は単純に言えば皇魔石の上位版の魔石なんだ」


 ふむふむ。


 魔石が一番弱くて、次に強いのが皇魔石で、次に強いのが神魔石女神石になる訳だ。


「バルバギア王国軍の人がこれを女神石と呼んでいたんですけど、どうしてですかね」


「理由は分からないけど、その魔石には凄まじい力が込められているんだ。それだけで大きな効果も持つことになる」


「大きな効果?」


「ああ。要は神がいると錯覚させる事ができるくらいに強い力が込められているんだ。恐らく世界でも三つもないような貴重な物だぞ?」


「ほえ~!」


 そんな貴重な物をくれたとは思わず、驚いてしまった。


「多分、女神様というのも抽象的な言葉なのだから、その魔石に魔物が寄り付かないから、女神様の奇跡~だなんて言って崇拝してるんじゃないかな~でも実際は中に込められた魔力がとんでもないから逃げていくんだよね」


「これがあれば町に魔物が寄り付かないんですね?」


「そうだね~もしおいらが居なかったら、その石は置いておくだけで良い効果をもたらしたね~」


 えっへんってドヤ顔するアクア様。


「これが魔石って事は、アクア様が食べられますか?」


「う~ん。それは難しい。それには神の力に匹敵する力が込められているからね。おいらが食べると消化できなくて大変な目に遭うと思うんだよん~だから、何かに使った方がいいと思うよ~」


「何か良い使い道が思い当たらないんですよね~置いておいても魔物はアクア様のおかげで来ないし…………」


 その時、後ろで僕達をじーっと見守っていたセレナちゃんが手を上げた。


「キャンバル様? 私に一つ提案があります!」


「セレナちゃん?」


 そして、セレナちゃんは自分が考えていた事を話し始めた。


 最初は突然の申し出に驚いてしまったけど、彼女の提案はとても素晴らしいモノだと、僕も爺もみんなもすぐに納得した。


 そうして、僕達は女神石の使い道を見出して、次にやるべき事に移った。

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