概要
ここは、この世とあの世を繋ぐ神様の為の旅館——『彼岸屋』
新宿の奥に存在する”神宿”に古くから八百万の神々に愛されてきた老舗旅館である。
彼岸屋を担うは若き当主、彼岸鳴。そして彼を献身的に支える護衛官の行実晴。
これは老舗旅館『彼岸屋』で繰り広げられる、ある冬の日のお話——。
【登場人物】
《 彼岸 鳴 》
二十九歳、男性。神々の宿泊する老舗旅館『彼岸屋』の若旦那。物腰柔らかな着物姿が印象的な青年。
平安の時代より続く『彼岸屋』の当代であり、この仕事を誇りに思っている。
五年前までは、護衛官である幼馴染の晴と共に、利用客である神様たちをそれぞれの担当神社へと送迎していたのだが、とある事故により現在は裏方へ。
誰に対しても敬語を使う(ただし子供に対しては外
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!「和」なバディが見たいあなたへ贈る
彼岸屋の当主とその護衛官を巡る和風バディものです。
序盤から、このふたり、まさか・・・?な描写がいくつかあり、それが一体何故なのか考えながら読み進めるのが楽しかったです。鳴の中性的で見る者を魅了してしまうのではと思うほどの容姿はどこかダークで耽美とさえ感じられる物語の雰囲気をよく引き出しています。
作品を一言で表すなら「妖しい」です。謎めいた部分を少しずつ紐解くうちに離れたくとも離れられない、綱渡りのような二人の関係性にどきどきさせられます。安易に、愛や友情という言葉で片付けることはできない、何とも言い難い二人。読み終わる頃にはこの先もこの命の灯が消えないことを祈りたくなる。
彼岸花の朱色…続きを読む - ★★★ Excellent!!!日本の四季と神道の美しさへ、作者の文が誘う絶品の和風物語
改めて日本の四季という美しさ、そして神道という考えの尊さを実感しました。
優しくあたたかい雰囲気に包み込んでくれる文字と、殺伐とした世界へ引きずり込んでくる文章。
作者のKaoLi様が綴る文章がとても力強く、気付けば「彼岸屋」のある世界へと全身で浸っている感覚で読み進めていました。
また主人公である鳴と晴の関係性が儚いようで、誰よりも強い絆を感じます。
この表裏一体がたまらない。
一言、尊いです。
いろいろな神様が登場し、幾重にも重なって進んでいく物語。
世界観は重厚なのに親しみやすく、読みやすいです。
このお話は「冬」が舞台となっておりましたが、できれば作者様の描く四季を私は見てみた…続きを読む - ★★★ Excellent!!!とても良いお宿でした!絶対また来ます!
最初に。
私は「クソデカ感情」という言葉が好きです。
言葉で表現することを放棄するほど大きすぎる感情。そこには愛もあれば心配や悲しみも混じる。そしてその感情を大きくする「過程」があるからこそ、クソデカ感情はその名の通り大きくなるのです。
本作の主人公の一人である晴は、もう一人の主人公の鳴にそんな「クソデカ感情」を抱いている(大変な私見)。
神様のお宿・彼岸屋の若旦那の鳴と、神様を目的地まで送り届ける役割の晴。この二人を表現する言葉は、幼馴染、親友、兄弟、仕事仲間、恋人etc……とにかく、一言では言い表せない。私なんぞがつついてはいけないほど尊いオブラートに守られている。神聖さすら感じまし…続きを読む