裏の繋がり

「どうしてクレアラにそんなことをするんだ!」

「私は貴方に恨みを買うようなことを、なにかしたかしら?」

 

 背中を踏みつけられたクレアラが顔をしかめ、憎々し気に毒づく。

 ロドニーは暫く考える素振りをする。


「いや、何もないよ。束の間ではあったが楽しいひと時を過ごせていたからね」

「それなのにどうしてこんな真似を!」


「君がルーナに似てきたのが悪い。今の君はあの頃のルーナを思い出させる。だから、どうせなら心の方もルーナになって欲しくてね」

「言っている意味が分からないのだけど──」

「もう一人のキャストを紹介しよう」


 バーディクトが指を鳴らすと、ロドニーのかたわらにビュレットが急に現れる。


「君とルーナは遠縁なんだよ。だから似てしまったのだろう。だからロドニーは君の体が欲しいと言っている訳だ。心はルーナの魂で代用するから、中身は不要だとね」

「吐き気のする理由ね。ようは昔の女を弟に取られたから、似ている私で可哀想な自分を慰めたいってところかしら」

「別にクレアラじゃなくても人形でも良いだろ。アンタの母親のアデラインみたいに」


「あれはまた特別でね。わざわざ私を病弱にしてまで手元から離さなかったんだよ。愛情の一つも注がないのに、僕が愛情を向けることだけを期待してね。その分の代償として愛情を支払ってもらおうと思って何体も作ってみたわけだが……余り、満たされなかったな」

「そのせいでこちらは苦労しているのだがね。動かすだけでも大量の祝福を消費するのに、彼女等は自制心と言うモノがないし、しかも人を痛ぶるのが趣味ときたものだ」


「そこは持ちつ持たれつだろ、バーディクト。君は生きる価値のない者から祝福を奪う。私は君の得た祝福を利用し、富と権力に溺れた者達に血を分け与えブレサイアに変える。そして彼らは必要以上に増え過ぎたブレサイアを殺して数を調整してくれる」

「──ずっと繋がってたのね!」

 

 味方のフリをしがら、だましていたと知り、クレアラが侮蔑の視線をロドニーに向ける。

「あぁ、彼には感謝している。僕に奇跡を使ってくれて一人でも生きていけるキッカケをプレゼントしてくれた」

「今まで、自分の力で生きてこなかっただけでしょ!」

「君なら分かってくれと思ったのだけどね。共に体の欠陥に苦しむ者同士として」


「祝福を分け与える力を持つ者は貴重だから、君の助力には感謝する。我々はアデラインが消えて困っていたからな。問題は解決されたが──次の問題もまたアデラインが作ってくれたがね。まぁ、君自身の欲望も問題だが……」

「まぁ、付き合ってくれよ。もうすぐ解決する。報酬として君の期待に応えよう」

「お互いに助け合う関係と言うものは素晴らしいね。心が晴れやかになる。助け合いこそが人間の美徳だ」

 

 笑みを浮かべ手を広げながら演技がかった仕草でバーディクトがそう語りかける。


「貴様らが人間を語るなよ!」

 

 僕は怒りを込めた言葉をバーディクトとロドニーに対してぶつける。


「僕は先に例の場所に向かっているよ。魂を入れ替えるのに必要な分の祝福は用意しておいてくれ」

 

 ビュレットがクレアラに近づきながら、ロドニーに話しかける。


 「問題ない。その辺から子共を数人調達してこよう」


 ロドニーは踏みつけていたクレアラの背中から足をどける。近づいたビュレットが彼女の側に膝を付く。


 ロドニーは目を閉じながら、二人に向けて手をかざす。

 クレアラとビュレットの姿が共に消え去った。

 助けに追いかけたいけど、転移が出来ない僕にはどうすることも出来ず、それを見届けるしかできなかった。


「さて、名残惜しいが、お別れだな」


 ロドニーが片手を上げるとアデライン達がゆっくりと僕達に向かって歩いて来る。

 逃げ道を塞がれるように囲まれる。レニエとトマーチンと僕で周囲三百六十度、見渡せるように互いの距離を詰めて身を寄せ合う形を取る。


「何か打開策はない?」

「状況が悪いですな。あればもう実行しております」

「私も同様です」


 その時、廊下に通じるドアが開き散弾銃を構えた男が突然入って来る。

 背後を取る形になっていたアデラインが振り向く前に、一発の散弾銃を撃ち、その頭を吹き飛ばした。

 頭を失った人形の体が前のめりになって倒れる。

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フランケンシュタインズ・モデル yuri2n(おそなえ) @yuri2n

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