長い夜を超えて

ある女性とぬいぐるみの話をした。
それはある少年が大人への一歩を進むための話。
その話を彼女が聞くと笑いながら「素晴らしい物語ね。でも、私は非現実的なことを信じないの」と言う。
どうして？と俺が聞く前に、彼女は言った。
「失った人と会えるなんて希望を持った時点で、その先は闇に満ち溢れているのよ」
笑った彼女のくぼみに滑り込んだ涙を、俺は見逃すことができなかった。
あれは夢だったのかもしれない。しかしそう思いたくない自分がどこかにいて、今日もあの親子を思い出す。