十五、師父と手合わせ
―――――十五年後。
あの日から長い年月が過ぎた。相も変わらず怪異を鎮める日々だが、五年前から
本当はもっとずっと前からひとりでこっそり(たぶんバレてはいたのだろうが)中級くらいの妖鬼を倒したり、低級の妖者を鎮めたりしていたのだが、 念願の公認での手伝いは(推定年齢ではあるが)十五になってからだった。
幼かった
細くて長い黒髪は後ろで三つ編みにされており、幼い頃に
涼し気な金の瞳を恐ろしいと思う者は誰もおらず、それは
「
湖水の都、
邸のひとつを提供されており、
本当は
しかしながら、
「
それさえも飽きてしまい、最後の手段として
しかし
十五年経っても容姿は変わらず、衰えもまったくない。霊力の強い者は歳をとっても神仙のごとくで、それは
「しーふー。じゃあせめて稽古をつけてよ。身体を動かしていれば少しは気が紛れる。俺を助けると思って、ね?」
「・・・・まるで大きな子供だな」
はあ、と嘆息し、やっと
強くなりたいという気持ちはあって、修練に対しては真面目に取り組み、すぐにその頭角を現した。それがどう転んだのか、今となってはこの有様である。
その声は無駄に甘く、しかし嫌みのない声で、ひと言ひと言が軽い。なので、何を言っても冗談を言っているようにしか聞こえない印象を持つ。
人に好かれる容姿や性格を持ち、誰に対してもこんな感じだが、他人に対してのものと自分たちに対してのものは解りやすく違う。
特に
「・・・では、手合わせでもするか」
「賛成。じゃあ今回の条件は?」
邸の縁側から庭に出て、
季節は秋。庭の木々は朱や黄色、紅に染まり、立派で手入れの行き届いた池の中に、銀杏の黄色い葉っぱが浮かんでいる。
「この円から出てはならない」
「いいね。面白そう」
「素手と脚のみ使用可。円から出たら負けだ」
先に右の方の円に入り、
ぴょんと片足で円に飛び込むように入ると、
「年寄りには負けないからね」
「そんなものは関係ない」
知ってる、と軽く笑って
五大一族の中で一番であるだけでなく、
現に、未だに一度も勝ったことがなく、悔しいというよりは楽しくて仕方がなかった。
ふたりの間を葉っぱがゆらゆらと舞い落ちる。それが地面に着いた瞬間、ふたりは常人の目には止まらない速さで、それぞれの攻撃を仕掛けたり受け流したりを繰り返す。
逢魔が繰り出す突きや蹴りを、涼しい顔で
青みのある灰色の眼は、規則性のない自由奔放な
逢魔もどこを狙っても避けられると解っているからか、顔面を迷いもなく手刀で狙ってくる。同じように遠慮なしに
そんなことを
それに気付いていた
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