十三、逢魔が欲しいモノ
翌日。店主とその息子が三人を見送ってくれた。雪が少し積もり、踏めば足跡が付いた。
次の行き先はそう遠くはない。この雪の状態であれば、昼すぎくらいに
そこから
「また、ぜひとも近くに寄った際はご利用ください。お待ちしております」
「・・・・ああ。よろしく頼む」
簡単に別れの挨拶を交わし、店主は最後に
幼いながらも、
遠ざかっていく村に、少し寂しそうな表情を浮かべていたが、ふたりの手をきゅっと握りしめる。見下ろしてくる瞳はそれぞれ違う色を浮かべていたが、
****
冬は雪が降れば白が映え、春や夏は緑が、秋には朱が映える。
公子である
この都で
幼い頃に都中に広まった噂。
「まさか、あの公子様にお子がっ!?」
「
「いや、
こそこそと集まって、民たちはああだこうだと考察する。それくらい、三人は仲睦まじく、親子のように見えたのだ。
そんな民たちの好奇の目などまったく気にも留めず、三人は
「どうしたの?あれが気になる?」
ある一点をじっと眺めている
そこには竹でできた縦笛や横笛がいくつも並べてあった。その中のひとつを
それは棚の上に飾ってあり、ふたりには届かない。値も高価なので、触れないように高い位置に置いてあるのだ。
「店主、これを」
そして懐から取り出した
「公子様がお使いになるのですか?それとも
上等な黒竹でできたその笛は、先の方に藍色の紐で括られた琥珀の玉飾りがついていて、普通の楽器ではないと一目で判る。
ふたりは首を振って、それから
店主は
「玩具であればこちらもありますが・・・・?」
「いや、これで間違いない」
はあ、と店主は納得いかないようだったが頭を下げ、最初の横笛と渡された金を交換し、
「これは見事な宝具だね。使いこなせるかな?」
ふふっと笑って、
それから、後に出てきた
「・・・・特別だ」
照れ隠しか、横を向いて
「優しい公子様、私はあれが欲しいな?
上目遣いで袖を掴み、あれ、と飴細工を指差して
このままでは夕方までに都の外れにある、
運よく雪が降ることはなく、夜になる前に邸に辿り着いた。
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