十九、始まりの神子
少しずつ息を整え、落ち着かせるように瞼を固く閉じる。しばらくそのままの状態で抱きついていた
薄闇の中でさえ蒼白と解るその顔色に、
「・・・前に話したよね?繋がっている夢の話。私と、もうひとりの、」
「なにかあったのか?」
唇を噛みしめ、
「始まりの
「だが、それは夢の中の者が言っているだけで、真意は解らない。君を
ふるふると首を振り、
「・・・そうだったら良かったけど、わかったんだ。夢の中で出会った時、手を重ねた時、私がずっと感じていた、欠けていたなにかがぴったりとはまったのを」
それはまるで初めからそこにあったかのように、不思議と溶け合うように、意識を共有することができたのだ。
「さっき、夢で・・・
「・・・そんな偶然、」
しかし、出会った時、幼い鬼子だった
「始まりの
この身体は魂を宿して生まれたその時から、特殊な体質になる。神と名の付く存在のみが、善でも悪でも子を宿せる。
孕ませるにはその霊気を注ぐ必要があり、女でも男でも例外はない。善であれば
「どちらにせよ、人は生まれない。国ができる時、神は
「ならば、あの
「陰と陽は隣り合わせ。神はもちろん光と闇を創った。
「君には、すべて知っていてもらいたい。その上で、頼みたいことがあるって言ったら、卑怯だって・・・君は私を嫌いになるかも」
「嫌いになど、ならない」
「なにも知らずに君が目の前から消えてしまうくらいなら、知っていた方が覚悟もできる」
「・・・・
何かを終わらせようとしているのだと、
そして、その後に
その返事を先延ばしにしたところで何も変わらないと解っていながらも、少しでも繋ぎとめておきたいという願いがあった。
「君には、私たちがいなくなった後のこの国を、守って欲しいと思ってる。もちろん、ちゃんと対策を練ってから託すから、心配はないよ?今、ふたりで色々と準備もしているんだ。四神のことや、この地の穢れのこと、それに、」
向かい合っているのに俯き、目も合わせずに早口で明るく話してみせる
「わかったから、もう、なにも言わなくていい」
「私は、本当に酷い
肩口が薄っすらと濡れているのが解る。どうしたら、その涙を止めてあげることができるだろう。本当の意味で守ってあげられるだろう。
「私は、君のことが、本当に愛おしい。離れたくない。この命が消えるその瞬間まで傍にいたい」
祈るように吐き出されるその声に、
しがみついてくるその指先は衣を固く握りしめ、離れたくないと言った言葉の通り、必死だった。
(君に伝えたいことがたくさんあるのに、俺は、なにひとつ言葉にできなくて)
それでも何も言わずに笑ってくれる
しかし現実の自分は、あいしてる、というひと言さえ、上手く紡げないのだ。
ただ、その涙が止まるまで、抱きしめてあげることくらいしか、できなくて。そうやってお互いを支えるように長い時間抱きしめ、気付けば外は仄かに明るくなっていた。
落ち着いたのか、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます