第2話 ②

「あ、、ぼ、くは、?」

 何故か声があまりでなかった。僕はなぜこんな所へいるのか、なぜ生きているのか、ここはどこなのか。言いたいことは沢山だったが、声が出ない。

「自己紹介がまだやったな。俺は獨ってんだ。とっさんとでも呼んでくれや。」

「あ、ぼ、くは、」

 自己紹介として自分の名を言おうとするも、やはり声が出ない。

「ああ大丈夫や。桐ヶ谷刹、14歳やろ?」

 コクリと僕は頷いた。

「まあ、なんて言うか、残念やが、お前のリョーシンはなくなってもうたわ。」

 何となく、薄々、気が付いてはいた。だけれども心の奥底のどこかでは、生きていると信じていたんだ。僕は、そうですか。と生気の無い声でぽつりと呟いた。

「俺はお前の父ちゃんから頼まれてここへ連れてきたんや。」

「お、父さんが?」

 間髪入れずに僕は聞いた。

「あぁ、事件の起こる数日前にな、万が一のことがあったら、刹を守ってくれと言われてな。」

「……そう、ですか。」

 僕はこのことと、警察官のような男に言われた〝知らなくていいことを知ってしまった〟という言葉と少し繋がった気がした。まるで父はこうなることが分かっていたのでは無いかと思い始めた。

「……ここは病院の地下や。…ワカゾーは右腕が折れとる。あと頭蓋にヒビが入っとうわ。んだから1ヶ月はここで過ごさんとあかん。」

「……はあ。」

 腑抜けた声しか出なかった。唐突な睡魔に襲われて目眩がしたからだ。僕は目を閉じないようにするだけでいっぱいいっぱいになっていた。

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バーサークアーミー ロアン @nekosannekoneko

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