第2話① 部屋

気がつくとそこはすごく明るかった。そこへぽつんと立っていた。太陽から近いようにも感じたし、ただただ閉塞的な明るい電気の着いた広い部屋のようにも感じた。なんとなく、なんとなくここは天国かなにか、死後の世界のようなものだとそう感じた。立ち尽くしていると前方に人影が見えた。顔は見えなかったが二人いて、直観的に僕は両親だと感じた。会えたのがとても嬉しくて僕は両親のいる方向へ走って行こうとした。すると

「来ないで!」

「来るな!」

 と両親の声があわさって僕の動きを止めた。

「なんで!僕はそっちに行きたい!お母さんやお父さんと一緒に居たい!」

 僕はそう必死になって両親の方へ叫んだ。ねぇお願い行かないで、ひとりにしないで、なんで…。

「まだ、まだ来ちゃダメなんだ。」

 と父がそう鼻の詰まった声で訴えかけた。

「なんでなんだよ!」

 僕はそう全ての疑問を投げかけるかのようにして叫んだ。

「ごめんね…。でもあなたはまだ、、生きて。」

 そう母が言いきった瞬間、僕は下に落ちるような浮遊感と共に目が覚めた。目を開くとそこは薄暗くてただ狭いだけの部屋だった。隣には人がいた。目線だけを横へやるとその人と目が合った。その人は僕の視線に気がつくとガチっ、と音を立ててパイプ椅子から腰を上げた。

「ワカゾー、起きたか。」

 僕の顔を覗き込んで言った。髭を生やした顔の濃い男だった。

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