最後に何故かひっくり返る。

　意味深長な、どこかパズルのような趣のお話。

　分量にして1,000文字に満たないショートショートで、気軽にサクッと読めちゃうところが魅力。
　また、作品紹介文の欄に後書きへのリンクがあり、解釈に迷った場合はこちらに解説があるので安心して読めます。

　作品の内容が内容だけに、ちょっと何を言ってもネタバレというか、余計な先入観を持たれそうで怖いのですけれど、中盤の不穏な空気感が好きです。
　全容はまだ見えないながらも、なんか良くないことが起こっているっぽいことが読み取れる、この独特のソワソワ感。素敵。

多視点の語り口が好きな感じでした。表現はどこかグロテスクで詩的でもある。結局なんなのかはよくわからなかったですがあとがきを読ませていただくと腑に落ちるとこもありつつ、ただその向きで表すならば読者が些か不利になるなと思いました。これは私の読み手としての能力もありますがそれを抜きにしてもなかなかここまでは読みきれない。同時にもっと視点を複雑にしながらヒントを散りばめてもいいのかなと(カエルの目線が描けるように水槽や冷蔵庫それらが見たものの感想が言語化されることも無理筋ではない)。しかしながら読めるとか読めないとかはそれぞれの自己満足なところもあるので私としてはこの作品から受けた詩情のようなものが…続きを読む