第18話

 その晩は、奈良の警察署で休み、翌朝、九条は五十嵐たち刑事に囲まれるようにして、新幹線で護送された。



「九条は罪を認め、刑に服する覚悟でしたが、供述が支離滅裂で心神喪失を疑われているようですね」

 須藤が五十嵐に言った。

「ああ。奴は真実しか語っていないのにな。蓮宮の供述と齟齬はない。俺らの証言も握りつぶされているんだろう。そんなオカルトな話しが現実のはずが無いってな」

「じゃあ、九条はどうなるんですか?」

「病院行きだろうな」


 蓮宮の事情聴取は終わり、やっと解放された。

「まったく、何なのよ! 私は事件解決に協力した功労者よ。なのに、何の権限でこんなにも拘束されなければならないのよ……」

 蓮宮の文句は止まりそうもなかったので、五十嵐は迎えに来たタクシーに乗せて、すぐに出発するように言った。タクシーのドアが閉まってもなお、文句を言い足りない蓮宮は、タクシーの運転手にもその愚痴を聞かせていた。



 数週間後、蓮宮が担当するオカルト雑誌が発売された。

『大都会のヴァンパイア』


「五十嵐さん、読みましたか?」

 須藤がさっそく買ってきたようだ。

「そんな物に興味はない」

 五十嵐はつっけんどんにそう答えた。


 九条は精神鑑定の結果、心神喪失と判断され、措置入院となった。その後、一年で退院し、通院は義務化されたものの、探偵業を始めた。その助手として、守護神となった「ゆき」が活躍したことは言うまでもない。


 蓮宮玲子は、次のテーマ『摩天楼の狼男』という都市伝説の取材に取り掛かっていた。

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ヴァンパイア伝説 白兎 @hakuto-i

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