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「田原様のおっしゃること、よくわかりました。だからこそ、いまほど世界に癒やしが必要なのですね。いがみ合いや除け者にするでもなく助け合い、アメリカとロシアに働きかけて争い以外の方法を話し合ってもらうしかないでしょう」


 うまくまとまった、と思った矢先だ。


「だが、この機に乗じて中国が攻めてくるかもしれない。すでに北朝鮮やロシアはちょっかいを出してきた」


 田原様は、言葉を続ける。


「口ではなんとでもいえるが、果たしてアメリカは助けてくれるのか。日本はNATOのグローバル・パートナー国として名を連ねているが、今回のことで侵略の際にNATO入りしていない国にアメリカは介入しないとわかった。アジア太平洋版のNATOを作らなければ、日本の独立と平和を保てないと思うのだが、どう思うかね」

「私、ですか……」


 そうですね、と息を吐いて考えを巡らせる。

 自分が生きている間に、まさか戦争が起きるなんて想像すらしていなかった。とはいえ、歴史を見れば第二次大戦後から今日まで、世界の各地で紛争や戦争は起きてきたことは周知の事実。知識として知っている。ただし、今起きていることは、一歩間違えば、世界を巻き込む第三次世界大戦の口火を着るかもしれないという不安をはらんでいる。もしかしたらが現実に起こりうる可能性のある戦争が、隣国で起きていると想像するだけで身震いしそう。

 これはフィクションではない。

 現実に直面している危機なのだ。


「欧米諸国を取り巻く反ロシアの同調圧力に、日本は巻き込まれたのですね。アメリカに守ってもらえなくなると危惧して反対意見を出せなかった。でも、いざとなって守ってもらえるかも怪しい。現にますます円安になってますし……まずは、大手メディアの情報を鵜呑みにせず、自分で調べるところからですね」


 田原様は私の意見に、「ほお」と声をあげられた。


「ウクライナでおきた暴動やアメリカがしたこと、ブタペスト覚書など、私は不勉強でした。なので、自分で調べ、備えたいと思いました。日本は自然災害が多い国なので、災害の避難訓練とともに有事に備えた避難場所への確認や食料などの備蓄、緊急時の包帯の巻き方など定期的に実習や訓練をし、いざというときに行動できるよう備えておくことが大事だと思います」


 できることと言ったら、精々このぐらい。でも、やらないより遥かにマシだ。


「そうだね。国民一人ひとりが危機意識を持って行動することで、各市町村、県や国の防衛につながるという考え方。それもまた大事だね、うん。若い娘の貴重な意見を聞けて、よかったよ」


 納得してくれたらしい。

 思わず、ふうっと息を吐いた。


「それでは本日、施術させていただきましたので、新陳代謝が活発になっております。普段よりも多めに水分をお取りください。お支度が整いましたら、受付の方へお越しください。ウォーターサーバーをご用意しておりますのでご利用ください。その際、お荷物をお忘れなくお持ちください」


 失礼します、と一礼してその場を離れ、バックヤードへ向かった。



                       〈了〉



※ この物語はフィクションです。

  実在の人物や団体等、一切関係ありません。

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世界は今、癒やしを求めている snowdrop @kasumin

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