青春部活モノ×姉妹愛×マイナー競技=究極(アルティメット)!

フライングディスクを使った「アルティメット」というマイナー競技を描いた青春部活モノ小説。
一言でいえばそうなのだけど「マイナー競技の小説でしょ? それ、面白いの?」と侮ることなかれ。
登場人物が、とにかくみんないきいきとしていて、読んでいるとあっという間に、彼女たちの究極世界(アルティメット・ワールド)に引き込まれてしまいます。

中学二年生の主人公のアリサは、姉であるエリサが高校時代にバスケットボールの大会で敗れたことが原因で、イップス(心の不調によるスランプ)に陥ってしまい、バスケットボールを辞めてしまったことを密かに心配します。
そんなエリサと同じフィールドに立つことを夢見て、アリサが始めた競技。それが、アルティメット。

アリサの周辺を取り巻くのは、とにかく賑やかで二次元オタク属性のつばめや、彼女とは水と油ほども違って落ち着いた麻乃、ニンジャに憧れるハーフ少女ミシェル、腰痛のウィングスパイカーのモッティー、そして謎に包まれたお嬢様属性の弓様など、ひと癖もふた癖もあって、そして魅力的な面々ばかり。
とくに、主人公アリサとつばめのコンビの軽妙な掛け合いは、おもわずにんまりとしてしまうくらい、面白くてかわいらしい。

マイナー競技を扱っているので、どうしても物語の前半はゆっくりとしたペースで進んでいきますが、その分、しっかりとキャラの描写やアルティメットの世界観を作り出すことができているように思います。
物語が転がり始めると、テンポよく読み進められて、読後感も爽やかな感動を与えてくれます。


ちなみに、文体は三人称視点的に描かれていますが、基本的にアリサを中心にした一人称視点です。こう書くと、視点警察に目を付けられそうですが、姉のエリサについて、作中、常に「お姉ちゃん」で呼称しているあたり、そこはかとなく「姉妹愛」を感じて、ああ、こういう表現もあるなぁと思ってしまいました。