第60話 なんとかなった1月28日

 わたし究乃カナ、14歳。あ、もう知ってた? だよね。前も話したもんね。ううん、ちゃんと覚えているよ? そこまでボケてない。大丈夫。

 昨日はなんとか宿題を終わらせて、コピペだって? ちがうちがうリアルタイムのほうだよ。

 10万文字を越えたからいつ終わりにしてもいいんだけど、どうやって終わりにしていいかわからないの。だからダラダラつづくだけ続けちゃおうかと思って。みんなは迷惑だって思うかもしれないけど。ごめんね、迷惑かけて。でも、かわいいから許されると思うの。うふふふふ。


 今日のおやつはフルーツサンド。いつものヤマザキのパンはどうしたって思うでしょ? そうなの。ちょっと浮気しちゃった。だって、近所にフルーツサンド屋さんができて、気になっていたんだもん。しかも、今はいちごの季節。女子だったらいちごのフルーツサンドを食べなくちゃって気持ちわかるよね? うん、いちごを食べて甘ずっぱい気持ちになりたいよね。

 パンに生クリームって、ちょっと味がぼやけちゃうと思うの。でも、そこにいちごが入ることで( ー`дー´)キリッと、おっと失礼、キリッと切れ味がよくなる。バナナやメロンとちがうよね。いちごでしょ。


 リアルタイムって、もともとミステリーを目指していなかったんだぁ。現代ドラマのカテゴリーだし。でも2話目からミステリーに無理矢理方向転換しちゃった。坂井令和(れいな)さんを名探偵にするためだけにね。わたしってサービスよすぎでしょ? 無茶ぶりには答えちゃうところがあるの。ううん、これはフリじゃなくてね。マジでマジで。押すなよ?


 あっと、いっけなーい。今日はデートの約束してたんだ。ポシェットにハンカチ、ティッシュ、スマホ、お財布を入れてっと。スマホはいつも持ち歩かないんだけど、リアルタイムを入力しなくちゃだからもっていくことにするね。


 ああ、もうこんな時間。はむっ。フルーツサンドは食べながら出かけることにするね。え? 一緒に行く? わがままな読者さん。じゃあ、一緒にいこっか。妖精になってその辺を飛びながらついてきてね。


 走っていかないと遅刻しちゃう。デートに遅刻したらおばあちゃんになってもデートで遅刻したよねって言われちゃう。やっだーん。わたしったらなに考えてるの? 結婚して子供ができて、成人して孫ができて、みんなが遊びにきて楽しい未来なんて、気が早すぎー。告白だってまだなんだから。


 どん、どしん。

「ぐぇえ」

 痛ったぁー、苦しい。なんかヘンな体勢。

「ごめんなさい! あ、究乃さん」

 ん? その声は。

「カズキくん? カズキくんなの? なんか苦しいし、ヘンな体勢なんだけど」

「ジャーマンスープレックスかけられたみたいになってるよ? いやっ、見てない。見てないけど、そんな気がするっていうか」

 首がキマっている感じだけれど、横に倒れたら体が動かせるようになった。

「ぷはぁ。あっ! 見た? 見たでしょ」

 パンツのお尻を丸出しにして、でんぐり返しのできそこないみたいな恰好になっていたみたい。やだ、恥ずかしいぃ。もうスカートを降ろしてパンツは隠したけど。パンツを降ろしたじゃないよっ! もう。読者さんも見た? そう、見てないならいいんだけど。

 カズキくんはそっぽを向いている。そっぽを向くにしても、わたしの状態を見ないことにはそんな判断できないんだから。恥ずかしくて顔がほてっちゃったよ。ぱたぱた。手のひらであおいでもあまり風はこないや。


「わたしとぶつかったってことは、カズキくんも遅刻しそうだったんだね。ああぁっ! ごめん! フルーツサンドが服にベッタリくっついちゃったね。いちご潰れて赤くなってるし」

「いや、こっちこそごめん。究乃さんの顔もべちゃべちゃだよ。はい」

 カズキくんはウェットティッシュを差し出してくれた。やさしい。ぽっ (#^.^#)

拭く前に顔にべったりくっついた生クリームとパンのカスを手でこそげ落とした。うげえ、手もべっちゃり。

 うえーん、デートなのにぃ。しかもフルーツサンドくわえながらデートに向かっていたってモロバレじゃない。スーパー憂鬱。メランコリック、ジャパン。

 きっとはしたない女の子って思われちゃったね。どうしたら清純派イメージを取り戻せると思う? もうムリとか言わないで。読者さんのイヂワル。


「カズキくん、よかったらうちの神殿こない? 服をもとに戻してあげたいし、わたしやっぱり顔洗いたいもん」

「い、いいの?」

「うん、きて」


 神殿の浴室前。

 さっきは、生クリームみたいなもっちり泡じゃなくて本物の生クリームで顔洗った気分だったよ。洗面台で顔を洗う。ぶはぁ。これでサッパリ。

「カズキくぅーん、湯加減大丈夫? わたしぬるま湯派だから、ぬるかったら設定温度あげてね」

「うん、ありがとう」

「それから魔法でキレイにした服、ここに置いたよ?」

「魔法でキレイにできたんだ、すごいね」

 くんかくんか。よし、匂いは覚えた。警察犬みたいだって? 究極の存在だから警察犬の30倍は鼻が利くよ。だったら嗅ぐ必要ないって? バカを言わないで。これは儀式みたいなもの、必要なんだから。ぬくもりも感じられるしね。

 

 今回はいつになったら事件にもどるんだって? 気になっちゃう? もういいんじゃないかな。そこまでいうなら見てもいいけど、つまらないと思うよ? チャレンジャーだねぇ。じゃあ、いっくよー!


 九乃カナの部屋は誰もいない寂しい状態。照明もついていない。暗い。

 ほらね? たぶんみんな帰っちゃったんだね。カクヨマーは暇じゃないんだよ。つぎの連載はじめたとか、短編とかね。

 ミカンだって公務員だからカレンダー通りにお仕事だし。死んだわたしの部屋になんてきていられないよ。え? 妹なのに働いているのかって? そこは時空の歪みが存在しているみたいね。困ったことだね。


 がちゃっ。

「きゃっ」

 ( *´艸`)

「ご、ごめん」

「ううん、わたしが長居したのが悪かったの。見てないから。目を押さえたし」

 押さえたのは口って気もするけど。カズキくんの裸バッチリ見ちゃったかも。今は浴室のドアの向こうにいる。曇りガラス越しにカズキくんの裸がぼんやり見える。

「見たくなかった?」

「ううん、大丈夫」

「そうか、それなら。ほらっ」

 カズキくんが浴室から出てきた! 堂々としていて、男らしい!

「究乃さんも裸になって」

「嫌だよ。カズキくん見るもん」

「見ない見ない。目をつぶるし」

「そんなこと言って、見ないで触るとか舐めるとかいうんでしょう」

「僕はそんなヘンタイじゃないよ。エロの本質は射精して赤ちゃんを作ることだからね」

「なに言ってるの! 真剣に言えば許されると思ってるでしょ」

「僕はいつだって真剣なんだ」

「それより、ヘンタイじゃないって言っておきながらエロの話してるけど、正しいエロだからヘンタイではないっていいたいんでしょ」

「その通り」

「わたしたちまだお互いの気持ちも確かめ合っていないのに」

「好きだよ」

「エロいことしたいという意味としか思えないよ」

「同じことだよ。好きだけどエロいことしたくないなんて言うのはまやかしだ。エロいことしたいけど好きじゃないっていうのもごまかしだ。エロいことしたいってことは好きってことなんだよ。だって、エロいことをする相手だって選り好みするじゃないか。わかったね」

 わたしは脱衣籠に置いていたデジカメを取り上げた。カズキくんのだ。

「カズキくんはこんなきれいな風景ばかり撮影する人なんだから、イメージ壊さないで! あれ?」

 さっきのわたしのパンツ丸出しジャーマンスープレックスとかいつ撮ったのやら胸チラとかそんな写真ばっかり撮影データに入っていた。

「いつの間にこんなの撮ったのー! 見てないけど撮ってたってことなのー!」

「わかったよね。僕は究乃さんが好きなんだ」

「エッチな盗撮見せられて言われてもうれしくなーい!」

「僕のこと好きじゃないの?」

「好きだけど、考え直したい気分」

「考え直す前に、ええーい!」

 わたしは裸になった。どんな魔法なのっ。

「好きだよ」

 抱きついてきた。いやーん、もう困っちゃーう。ああーん。

 読者さんは見ちゃダメ。これでお別れね。今までリアルタイムに付き合ってくれてありがとうございましたぁーん!






 原作、脚本、監督 九乃カナ


 出演       坂井令和(れいな)  野々ちえ

          無月兄        無月弟

          橙 suzukake      ホシノユカイ


 音楽       ラベル「ピアノ協奏曲」(第3話下書きの世界にて挿入歌)

          演奏 マルタ・アルゲリッチ


 撮影、編集    九乃カナ


 配給       カクヨム


 制作総指揮    九乃カナ


 

 九乃カナは手を止めた。うーん、こんなことでいいのだろうか。読んだだけ損した気分になりそう。でも、これ以上どうしようもないか。

 公開ボタンを押して、「今すぐ後悔する」をぽちっ。あぁ、やっちゃった。


          完

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リアルタイム 九乃カナ @kyuno-kana

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