第56話 頼もしいぞレイネーター1月14日

 だだん、だん、だだん! だだん、だん、だだん!

「わたしの事件は? いつの間にか岬の上で寝ていました。お姉ちゃんが犯人らしき影を岬から蹴り落としちゃったけど。あの影は死んじゃったんですか?」

「ミカンちゃんの事件は、カズキ密室殺人アンド消失に見せかけ事件と連続しています」

「犯人一緒なんですか」

「そのとーり!」

 どーん!

「犯人は崖から落ちて死んじゃったんですか」

「いいえ、死んでいません。理由は、九乃さんを殺した犯人とも同一人物だからです。ついでに庭師の橙 suzukake さんと料理人も殺していきました」

「殺しまくりですね」

「シリアルキラー、いいですね」

 坂井令和(れいな)さんは本格ミステリマニアである。だだん、だん、だだん!


「なんでそんなひどいことをするんですか」

「九乃さんが邪魔だったのでしょうね」

「わたしもお姉ちゃん邪魔だしいなくなればいいのにっていつも思っていたけど、殺そうとまでは思いません。お姉ちゃんは犯人になにをしたんですか」

「そうですねえ、単純に存在が邪魔だったのですね、きっと」

「いいますね、坂井さん」

「わたしじゃないですー。犯人ですよ、九乃さんが邪魔って思ったのは」

 ミカンにいなくなればいいなんて思われていたとは。しくしく。メランコリー九乃カナ。メランコリーを思い出せなくて、過去コメントから検索して探しましたよ。


「一連の事件からは九乃さんの存在を消そうという意図が読み取れます。最後には本当に消し去ってしまいました。だから事件はもう起きません」

 無月さんは立ってコーヒーのソーサーとカップをもっている。ミカンが淹れたインスタントコーヒーだ。ソーサーとカップなんて大げさ、インスタントなんて小さいマグカップで十分なのに。わかってないわね。

「あちっ、まだ熱湯です。でも、名探偵は遅れて事件が終わってからやってくるのですね」

「それほどでもぉ(´∀`*)ウフフ」

 照れて見せる坂井令和(れいな)さん。おだてに弱いと見た。皮肉は効かない。

「ハイデさんは関係なくないですか?」

「関係なくなくないですね。あれ? 関係なくなくなくない? です」

「どっちですか」

「関係ナッシン👊グー

「でも犯人は同じなんですか」

「犯人もちがいます。犯人は橙 suzukake さんです」

 あっさり。もっともったいぶってもいいのに。まだ1000文字いってないし。

「よかったぁ、自分じゃなくて」

 無月弟さんの容疑が晴れてしまった。最後までひっぱればよかったのに。坂井令和(れいな)さん、おだてに乗りすぎです。

「大丈夫ですよ、どこかで九乃さんがウンチク語って文字数稼げばいいんです」

 ウンチクなんてあったっけ。これからね、これから。きっと事件の真相にたどりつくにはウンチクが必要になるんですね。お願いしますよ、坂井令和(れいな)さん(人>ω•*)

「坂井さん、なんです?」

「いえ、こっちの話です」

「もしかして幻聴さんですか?」

「そんなところですね」


    幻聴にされた。       神様の究乃カナなのにっ!

 パクりました。

「パクりましたね」


「そうすると橙 suzukake さんの密室トリックもわかっちゃったんですか」

「本格ミステリマニアが怒りますよ、あの程度のことで密室トリックなんて言ったら。ぷんぷん(`・ω・´)」

「本格ミステリマニア怖い」

 ふぁさあと、髪を後ろへ流す。

「カクヨムコンチ! つづきは明日!」

 いやいやいや、まだ1300文字だって! いままでで一番短いくらいになってしまいます。つづけてつづけて。

「えぇ、キメゼリフ出たら次回へつづくなんだけどぉー」

 じゃあ、ここから。ここから次回分ということで、ひとつ。

「仕方ないなあ、今日も午後から休日出勤したいのに」

 推理終わってからで!


「では、密室トリックというほどでもない、密室の話までしますぅ」

「お城に行きますか、車出しますよ」

「いいですぅ、わたしアームチェア探偵なんで」

 きょろきょろする坂井令和(れいな)さん。立ち上がってドアを出て行く。ゴロゴロと重そうな音をさせてもどってきた。それ、わたくしのアーロンチェア!

「ありました、九乃さんアーロンチェア使ってるって言ってたから」

 いいんですよ。腰痛ともおさらば、お尻にかく汗ともおさらば、付き合っている人がいればキレイにおさらばできることでしょう、アーロンチェア。お高いけれど、死ぬまで使えるから長い目で見たらお得です。もしかしてウンチクってこれ?

「よいしょっと、ああ、これはいいですぅ。楽ですね」

 そうでしょ? 冬はちょっとお尻寒いけれど。わたくしは着る毛布を下半身に巻きつけてすわっていますの。

「それで、密室の話は?」

「なんでしたっけぇ」

 背もたれによりかかって遊んでいる。いいんです、文字数稼げるから。びよーんびよーんって、6文字くらいのものですけれどね。

「密室ね、いいでしょう」

 床を蹴って、くるんとくるくるんと回転する。


「まず橙 suzukake さんはメイドとデキていました。これは論理的帰結です。なぜなら、メイドは毎晩のように地下倉庫へ降りて隠し通路の扉を開けてやるのがメンドクサくなっていたはずだからです。それはあの日、扉のロックをはずしてくれる人がいなかったのに、橙 suzukake さんがハイデの部屋へ忍び込んだことから推理できます。

 ハイデの部屋へ忍び込むくらいだから、橙 suzukake さんとメイドは破局したのです。それか、お互いに飽きて自然消滅しましたぁ」

「扉のロックはかかっていない状態だったってことですか」

「そうです。橙 suzukake さんとメイドが付き合っていたころから、ロックがかからないように静かに扉を閉めることで、いつでも橙 suzukake さんが地下通路を通って城の中にはいれるようにしていたのです。メンドクサかったんですよ」

「それはわかりました。ハイデの部屋にはノックしていれてもらったんですか?」

「九乃さんはそんなこと言っていましたね。でも、そんなわけありません。夜中によく知らない庭師が訪ねてきて部屋に入れるわけありません。

 メイドとちがってハイデはお客さんですからね、ふたりに接点がない。遠くから見たことあるくらいのことです。

 あの夜、遅くになって九乃さんと無月弟さんがお城にやってきて隠し通路の出口のひとつを無月弟さんが占領してしまった。それで密室みたいに思えたけれど、通路があるのだから密室と思うのがおかしいんです。

 九乃さんと無月さんがくるまえに、橙 suzukake さんは隠し通路を通って、たぶんハイデの部屋のクローゼットにいました。ハイデの様子をのぞき見しつつ、寝入るのを待っていたのです」

 わたくしの推理が否定されるなんて。メランコリー九乃カナ。

 坂井令和(れいな)さんがすわっていたイスは、今ミカンがすわっている。無月さんは立たされたまま。すみませんねえ、イスもない部屋で。ぐすん。


「ハイデが寝たところで橙 suzukake さんはクローゼットから出て襲いかかったのです。ハサミをかまえてハイデを起した。ハイデは脅されていると認識する前に恐怖で悲鳴をあげた。口を押えハサミを見せる。ハイデは命令に従うしかなくなります」

「ナイフじゃなくてハサミなんですか」

「ナイフはなんてことのない普通のナイフ。これはハイデが護身用に枕のそばに置いていたのでしょう。橙 suzukake さんに向かって振りまわしたのでしょうね、どこかに傷をつけます。そうなると、ナイフに橙 suzukake さんの血がついて処分を考えないといけなくなります。悲鳴を聞いた人間が駆けつけるかもしれません。お楽しみの時間はなくなりました。

 ナイフを取り上げたあとはナイフで脅します。ハサミはしまってね。カーテンに巻きつくように命令して拘束し、胸にハイデのナイフを突き刺した。自分の血は隠せます」

「なぜカーテンに巻きつけたんですか」

 いいところに気がつきました、無月兄さん。

「九乃さんは黙ってて」

 ごめんなさい。

「まず、ハイデを拘束するのに都合のよいものが見つからなかった。なぜ拘束する必要があるかというと、胸をひと刺しして殺すためです。動かれたら失敗するかもしれないですからね。

 失敗して浅い傷をつけると、自分の血がハイデの肌につく恐れがある。ぐっと刺せば、血が体の中にはいるし、ナイフの根元付近にたまっても、ハイデの血も出てくるのだから混ざってごまかせる。そういうことですぅ」


「密室からの脱出はどうしたんですか。ドアの外にはすぐに執事がきますよ」

「殺すときの悲鳴を聞いて、九乃さんと無月弟さんがやってきます。それより少し前に執事もきていました。ナイフで刺してからは事後工作をしている時間がなかったことでしょう。それに、することもありません。クローゼットの隠し通路から脱出するだけです」

「それでは無月弟さんの部屋に出てしまいますよ」

 ナイス、ミカンのツッコミ。話聞いていたのね。

「それでいいんですよ。だって、無月弟さんはハイデの部屋の前にいるんですから」

「ん? そうか。部屋のロックは内側からしかできなくて、無月弟さんの部屋はロックされていない。ロックするトリックがいらないから、密室ではない。そういうことですか」

「ね? 密室トリックっていうほどでもなかったでしょ?」

「お姉ちゃんらしい、インチキくさい話ですね」

 わるかったわね! インチキ野郎のコンコンチキで。

「そうすると、ハイデ殺しの犯人は橙 suzukake さんだったとして」

「わたしの推理に間違いはない」

「ほかの事件の犯人は、誰なんです?」

 ミカン、催促しないで。このままあっさり解決したら、すこし文字数足りなくなりそうなんだから。九乃カナとの子供時代からの思い出話とかはじめて。そうして。

「カズキ殺し、ミカンちゃん誘拐、九乃さん殺し、連続した事件の犯人は」

「犯人は?」

 ちらっ。目配せされてもっ。坂井令和(れいな)さんダメ、まだ早いからっ。

「カクヨムコンチ! 犯人は、あなたです。ドーン」

 坂井令和(れいな)さんはキメゼリフとともに犯人を指した! あぁ、文字数がぁっ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る