空虚に身を委ねて

　滴り落ちる血と路傍に転がる骸。ラーレンドルク帝国南部では内乱の兆しが見えていた。それにより一夜にして故郷を失った少年ノラ。あまりの凄惨な出来事を前に、震えて沙汰を待つことしかできなかった。それはすべてを忘却してしまうほどに長く短い時間。そんな孤独を打ち壊したのは、死を渇望する放浪者の女だった。

　やがて二人は内乱の生んだ怨嗟の奔流に呑まれながらも、残酷な世界を旅する。折り重なる生と死、呪われた血脈。いつしか内乱の炎は燃え広がり、帝国の隠してきた不都合な事実を暴くことになる。これは、それぞれの運命に翻弄されながらも〝自分〟を問う物語。

　死を望む女。希望を持たざる少年少女。過去に囚われ続ける騎士。教会権力を握る大聖女。彼らが、苦難の果てに手にするのは一体。