【タイトル】ホログラムと少年

【作者】koumoto

【ジャンル】SF

【読んだ話数】読了

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888222790

　人間が死に絶えた世界で廃墟をめぐり玩具を集めるアンドロイド。それが主人公の少年です。

　ポストアポカリプスって良いですよね。静けさと自然と美しさとはかなさ、いろいろなものが詰まっていています。

　この作品も描写がとてもきれいな印象をうけました。

　人間が主人公であればそんな世界でもどうにか生き延びようとするか、ただ死を待つかの二択となるのでしょうが、主人公はアンドロイド。死にたくないという生き物としての欲求もなければ、この状況への不満もない。ただ目の前に転がっている人類が残したガレキの山の中から自分が楽しめる玩具を探して日々を生きています。

　そんな少年が特に好んで何度も見ているのが熊のホログラム。残虐だからこそ生死を感じさせる映像に、死ぬということがよくわからないアンドロイドの少年は魅了されます。

　生きたいと望みながら死んでいった人間たち。生きたいという気持ちもよくわからないまま生き残ったアンドロイド。そして人類が生きていたことを証明しつつ、すでにいなくなったことをも証明してしまうガレキの山たち。静かで美しく、どこか哀愁が漂う作品です。

　と、ここまでどうにか雰囲気を伝えようとしてみましたが、やはり文章で伝えるのは難しい。これはもう黙って読んでみた方が早いと思います。

　一万字以内で完結する短編ですので、描写を楽しみたい方、作品の作り出す雰囲気に浸りたい方はおすすめの一作です。