情熱の果てに見たもの 冷門 風之助様

【タイトル】情熱の果てに見たもの

【作者】冷門 風之助 

【ジャンル】現代ドラマ

【読んだ話数】読了

https://kakuyomu.jp/works/1177354054897809108


 私立探偵の主人公が受けた依頼は満足な理由も語らず自分の元を去ってしまった女性に別れの理由を聞いてきてほしい。というもの。これだけ聞くと簡単な依頼に思いえますが、依頼主と女性は不倫関係にあったため事情が複雑です。


 テーマ的には大人の恋。青春を扱った応援したくなるような恋とは違い、なぜ。が頭に浮かびます。なぜ不倫だと知りながら関係をもったのか、なぜ急にいなくなったのか。それは読み進めていくとわかっていくわけですが、それに納得できるかどうかは読者によるのかなと思いました。


 頭ではいけない事とはわかっていても感情はままならないもので、とくに恋愛事となれば常に理性的に動けるとは限りません。それでも不倫はいけないことだ。と思うのも、こういう恋の形もあるのだろうと受け入れるのも、個人の感慨によるものであり、そうした話をあえて扱っているのがカッコいいなと思いました。


 作品を書くにあたって、読者が受ける印象を考えたり、ある程度操作していると思います。ホラーでしたら恐怖や後味が悪い読後感を目指すでしょうし、冒険物語であったらストレスのない爽快なストーリーを意識するでしょう。


 人によって感想が変わる物語であっても操作はある程度可能です。主人公に俺はこう思う。という意思表示をさせれば、それが作品全体の話になります。けれど、この作品ではそれをさせていません。主人公はただの聞き手です。聞いた話にたいして思うことはあれど、それを読者に対してこの物語はこういうものである。と押し付けては来ません。

 だからこそいろんな感想が持てるわけです。不満も抱けるし納得もできる。それが作品に味を与えているのですが、それをできるのがすごいなと。


 読者からの反応って気になるもので、やはり受けのよさそうな話を書いてしまいがちです。それをせず自分の書きたいものを表現するというのは大切だなと改めて感じる作品でもありました。

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