平凡な伊上くんの早春と蒼旬

　湘南育ちで真面目な優等生の「僕＝伊上栄作」は、父親の転勤で、思春期を大阪で過ごすことになった。大学受験に失敗し、通い始めた予備校で、高校時代にほのかに想いを寄せていたクラスメートの篠崎紀子と再会する。恋愛に奥手だった「僕」は、不器用ながらも、なんとか彼女との距離を縮めようとしつつ、人を好きになることの苦しさも味わっていた。
　お坊ちゃま育ちでどことなく頼りなく、自分に今ひとつ自信が持てない「僕」が、恋愛、大学の友人同士との付き合い、そしてアルバイトの家庭教師の仕事などを通して、次第に逞しく成長していく姿を描いた自伝的小説「伊上くんシリーズ」の第1部、はじまります。