いつか「ひとりと一匹」の物語が、紡がれる日が訪れそうな

海と龍の星アルマナイマの文化や自然を、星の外から入ってきた側、言語学者ドクター・アムの目線で描いた「博物誌」シリーズ。
今回のお話の主軸は<龍挑みの儀>。
海洋放浪民セムタム族が、<ファル>と呼ばれる同じ知性体ながら圧倒的強さを持つ巨大生物に真っ向から挑む、その一連の流れを取り巻く様々な思惑。
なぜ、一見なんのメリットもないのに龍の側が定められたルールを守り挑みを受けるのか、ドクター・アムはその疑問に答えのひとつを見出し、そして自身が研究する言語について想いを馳せ、またひとつの途方もなく大きな疑問に辿り着く。
他の「博物誌」シリーズとは異なり中々気楽に読めるお話ではありませんが、最後の章に描かれるいのちを「いただく」という行為と、それを誰かと共にする、という情景が、ほのかに暖かい読後感をもたらしてくれました。

そしていつか「ひとりと一匹」の物語が紡がれる日が訪れそうな、そんな想いがします。