喩えるなら、奇襲に次ぐ奇襲。(だってこんなにも美しい)

シナリオ理論について胸張って語れるほど勉強しているわけではないので、あんまり偉ぶったことは云えんのですが──物語と云うのは基本複数のパートによって構成されておるわけでして。

たとえばABCDと云う四つのパートで構成されているのであれば、AからBにシフトする部分、BからCにシフトする部分──といった境界に何かしら重要かつ意外な展開、読者を惹きつけるイベントなんかが挟み込まれていたりすると、所謂「おもしれーシナリオ」認定されやすい傾向にあります。数学で云うところの変曲点みたいな。物語と云う一本の線を巧みにアップダウンさせることで読者を飽きさせません的な。

で、ようやっと作品の魅力を語るに及ぶわけですが、この作品はっきり云ってもう変曲点だらけ。さながら変曲点の無法地帯よ。たとえばこのキャッチーなコピー。

私の隣の席にやってきた転校生は、バラバラの死体でした。

初見さんは大方「ははーんトリッキーな比喩表現なのかな?」とか思うじゃん? 文字通りなんだなコレが。転校生は正真正銘バラバラの死体で、金属で出来たカゴに入ってて、キャスター付きのカートの上に乗ってるんですよ。

とはいえ、人は順応してゆく生き物だから。「あーそういう世界観ね」と一旦把握さえしてしまえば鈍化してくる。第7話で坂本さん(ちなみに坂本さんは第16話でも間接的に仕掛けてくる)から奇襲を食らい、第8話で主人公の母親から奇襲を食らい──それでも「まあこの異世界なら何でもアリっしょ」で能天気に情報処理してた矢先の第15話よ。

いや、第15話の奇襲はね。何と云うか"位相"が違うんだ。これまでの奇襲は完全なる異世界からの攻撃。結局は対岸の何とやらって感じだったけど、このエピソードで急に現実──私たちが今いる世界に片足突っ込んでからの一撃を浴びせてくるんですよ。そして、第20話にて読者はいよいよ完全なる現実からの奇襲を受ける羽目になる。もうね、奇襲のフルコースですよコレは。

さて、ここまで熱入れて語ったら流石にさわりくらいは誰かしら目を通してくれると思うのだけれど、こういう話だとさ。昨今特に気にする人は気にするじゃない?「で、ハッピーエンドなの? バッドエンドなの?」みたいな。世の中にはメリーバッドエンドと云う便利なワードがあると承知した上で云うんだけど、私はこれをハッピーエンドの類だと思うて止まぬのです。

この物語の幕引きは、だってこんなにも美しい。