情動二要因論

貴女が毒を吐き出して逝った時、


私の目を見ていた。



「大丈夫だから」と言ってやれと言われたが、

口が裂けてもそんな言葉は出なかった。



まだ、大丈夫じゃないから…?



否、


死してなお私を見ていてくれる、


私は胸を貫くような悲しみの中に、確かに悦を感じていた。


もっと、もっと。


貴女の苦しみの中に、私がいる。



その証を、私を想いながら事切れる瞬間を、


私に見せて欲しい。



その渇きゆく目も、死後硬直の始まる身体も、


貴女のものであれば骨の髄まで


私のものにしたくてしょうがない。




毒の充満したままの口に舌を絡ませ、


熱を流し込む。


喉を焼くような濃厚な酸が逆流し、

私の口内に痕を残す。


2人の隙間を埋めるような、

沸 滾る化学反応。





退けられることのない愛を捧ぐ。


永久に燻る熱を貴女に

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無理矢理掌握小説 初花 @koko_

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