彼の刺青は、生き物のようだ。

 主人公は刺青の彫り師。海のノマド的な民族の中でも、変わり者と評判だ。そんな主人公のもとに、さらに風変わりな二人がやって来て、主人公に刺青を依頼する。主人公の民族では、刺青は成人の証だった。つまり、一種の通過儀礼だ。
 主人公の刺青は、施術を行う場所や材料まで、その人や信仰によって意味が異なる。まるで、主人公の刺青は、人によって姿を変える生き物のようだ。
 二人はサメの歯を用いた刺青を、主人公に依頼するが、鋸状のサメの歯を使った施術には大変な痛みを伴う。しかしそれは、サメが受けた痛みでもあるとされた。女性はその痛みに耐えて見せたが、女性と共にいた男性は痛みに悶絶する。それでも主人公は自分の仕事を完遂する。
 
 民族学的考証に裏打ちされた、刺青の彫り師の物語。
 拝読後には、柔らかな気持ちになれます。

 民族学が好きな方に特にお勧めします。

 是非、御一読下さい。