向日葵が枯れるまで

タイトルからしてすごい
なっちゃんの雰囲気や性格がなんとなく自分と似ているところがあり、照らし合わせました｡
喜怒哀楽というように章を分ける発想がすごく、それぞれどう言った話なのだろうとワクワクしながら読むことができました｡

発達障害にいじめ、余命一ヶ月……いくつもの理不尽に苛まれる七瀬。一見、彼女の自由奔放さに任せて一ヶ月の出来事をなぞっているようですが、向日葵や景色の描写、七瀬と賢太の心情の変化、所々に挟み込まれるエピソードなど、非常に考えられ無駄がない構成に思えました。
近況ノートを拝見すると展開にかなり悩まれたようですが、悩まれただけのことはあるというか、個人的にはいまのエンディングで良かったと思います。

はじめから終わりまで、七瀬というヒロインが強すぎて、美しすぎる。
余命一月という理不尽や、自分を除け者にする世界にも負けることのないその姿は本当に、高く強く咲く向日葵のようでした。また、どこか諦めたような振る舞いや達観した態度の描写が、七瀬朱里という人間に儚げな陰りをもたらしていて、「明るいだけじゃない」彼女の魅力が伝わりました。
だからこそ、「僕」はそんな七瀬を忘れられないのでしょう。

至る所が「向日葵」をモチーフに書かれており、それを心に留めておくと一層深みが増すお話だと思います。

ヒロインの七瀬の、自らのハンディに対する偏見を経て、そうなる『運命』にあると分かっており、ある程度諦めがある描写に並々ならぬリアリティがありました。主要登場人物が物語の中で、確かに呼吸をしていました。

そんな彼女から見た作中のカフカの『変身』の解釈が秀逸でした。
そう、彼女は脳の病気で余命があり、近々死んでしまうということすら、ある程度運命として受け入れようとしていたのかなと思い悲痛な気持ちになります。

最後のシーン、それでもかかえきれないものを打ち明ける彼女の心境、朝と夜で変わる海の色、全てに計算を感じました。うまい作りでした。