2-06 朝の給仕

 桃色のチョーカーを身に付けた僕は、今日から朝食の配膳も手伝うことになっていた。

 もちろん、マーガレットさんが付き添ってくれる。


 普段と違って、今日は公式な朝食らしい。

 客人がいらしているのだ。


 僕たち侍従は調理場の外で待機して、朝食の乗った台車が出てくるのを待った。

 そこには美味しそうな香りが漏れ出してきていて、思わず鼻をひくつかせてしまう。


「お腹が空いたのかしら?」とマーガレットさんが笑う。


 僕はお腹をさすって肯定した。


「おまたせしました」料理長の声だ。


 彼は台車を引いてきて、僕たちの前にとめた。

 一つ一つの料理名を唱え始める。

 これをしっかり暗記することが必要だ。


 僕は料理長に一つ一つ正しいかどうか確認をし、頭の中で復唱し続けたのだった。


「わかりました。では行きましょうか」


 マーガレットさんの言葉を皮切りに、料理長の押す台車を含めて四台を押しはじめた。

 僕は安定して運ぶには少し背が足りなかったので、その芸術的な名を冠した朝食の後をついて歩くことになった。


 大広間の扉を開けて、赤い絨毯の上を台車が進んでいく。


 僕たちは、大きなテーブルを囲っている大ご主人さまのご家族とその客人の前に、料理名を言いながら配膳していった。


 料理長が軽く料理の説明をする。


 配膳し終わると、部屋の隅に立って待機するのだ。


 ご主人さまは器用にスプーンを使ってスープを口に運んでいる。

 とてもよく見える位置に僕は立っている。

 神に感謝だ。


 大ご主人さまが朝だと言うのにワインを求められたので、僕は料理長の使いでひとっ走り。


 穏やかな朝食だった。

 ご歓談も弾み、客人の方々は優しくて、僕の緊張がほぐれるような冗談も口にしてくれる。


 食事が終わると、今度は食後のショコラを給仕して回らねばならない。

 マーガレットさんの指示を受けながら、静かに、洗練された動きでショコラをカップに注いでいく。


 大ご主人さまや奥さまは、僕の注いだショコラを大げさに絶賛してくださった。「記念すべき日の、記念すべきショコラ」と。


 一方、エヴァンジェリンご主人さまは、僕に耳打ちをして言った。


「今日のお弁当は何か、マーガレットに訊いてきて」

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