第23話 2019年に読んだ本から。

 あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。


 書くことに専念していた2018年と違って2019年は比較的よく読んだ一年でした。例年どおりその中から印象深い本をいくつかピックアップさせていただきます。


・『不思議の国の少女たち』

 『トランクの中に行った双子』

 『砂糖の空から落ちてきた少女』

 ショーニン・マグワイア、原島文世訳


 不思議の国、死者の国、妖精の国、お菓子の国……等々、こちらの世界から異世界へ迷い込み、そしてまたこちらの世界へ帰ってきてきてしまった子供たちが集う寄宿学校が舞台のファンタジーYAシリーズ。その設定だけで勝ったも同然だと思う。

 設定だけだとなんだか楽し気だが、子供たちは単純にマイノリティの寓意だし(本文を読むと体型に悩みをかかえていたり、人種的にマイノリティだったり、ジェンダーに悩みを抱えて入りたりする子がほとんど)、せっかく何もかも順応していた異世界を恋しがる子がほとんどで、こちらの世界に還ってきたところで両親と適切な親子関係を結ぶことやこの世界に適応できない子がほとんどだという痛ましい背景があったりする。そこが実にYAであるが、異世界から帰ってきた子供たちの証言を基にナンセンスやロジックといった異世界相関マップがあったりするのが面白い。特にこのマップ設定はパク……自作の参考にしたい。

 惜しかったのが訳文がちょっと合わなかったことですね。続刊が出たらおそらく買うことでしょう。ちなみに二巻が百合。双子ものが好きな人も読むと良い。



・『神秘大通り(上・下)』

 ジョン・アーヴィング、小竹由美子訳


 51歳の作家がクリスマスにフィリピンへ向かう途中、飛行機の中でセクシーは母娘に出会って関係を持つ中、もらった薬の効果でメキシコのゴミ捨て場で生まれ育ちそこからアメリカへ旅立つまでの少年時代の夢をみる――という形で現在と過去が交互に語られるという構成の小説。

 初めて読んだジョン・アーヴィングだった。面白かったので印象に残っている。特に過去パートに出てくる主人公の妹が良かった。口がきけないけど人の心を読めるというキャラクターだけど、とにかく心の中で語ってる悪態が凄まじいので好き。



・『82年生まれ、キム・ジヨン』

 チョ・ナムジュ、斎藤真理子訳


 81年生まれのキム・ジヨンシが、31才だった2015年に突然不可思議な憑依現象を発症する。実母や先輩の口調になって語りだす妻を夫は精神科の元へつれてゆき、カウンセリングを受けさせる。そこで語られるジヨン氏及び勧告現代女性を取り巻く諸問題とは――?

 今年話題になっていた一冊。読むと、日本でも全然他人事ではない「ああ~……」となる現実の数々が白日の下にさらされるのだった。苦いオチがいい。



・『コードネーム・ヴェリティ』

 『ローズ・アンダーファイア』

 エリザベス・ウェイン、吉澤康子訳


 第二次大戦中、戦場で戦う男性たちの後方支援をするパイロットとしていて活躍するも歴史に名を残すことのなかった少女たちを主人公に据えたYAシリーズ。

 『コードネーム……』の方は、スパイ容疑で囚われたドイツ軍に囚われた英国人少女が、情報を手記として提出するように強制させられた際に提出した物語仕立ての手記からなる前半と、彼女の親友を語りてにしてどうして彼女は物語の形として手記を提出することにしたのかを明かす後半からなる。

 『ローズ……』は、イギリスの英国補助航空部隊に所属していたアメリカ人パイロットの少女が、ドイツ軍に捕らえられてラーフェンスブリュック女子強制収容所の囚人になってしまうというストーリー。

 2019年のベストを選ぶとしたらこの二冊を迷わず推すことになるであろう、ツボにはまったシリーズ。戦争・軍人・過酷な環境、そして百合。好きしかない……と隔たった好みを先に曝け出したうえでいうけれど、女子ふたりの強いきずなを描いたものが好きな人は『コードネーム・ヴェリティ』を四の五の言わずに読んで欲しい。私は強制収容所下でゴリゴリのシスターフッドが展開される『ローズ・アンダーファイア』がとにかく好みでした(ソ連の無冠の撃墜王女子も出てくるからソ連好きの人も要チェックですよ)。

 どちらか一冊でも楽しめるけれど、シリーズになっているので二冊とも読むのをお勧めしたい。共通する登場人物もいるのでそっちの方が楽しめますよ。シリーズ三冊目の邦訳も決まってるらしいので刊行を待ちたい。



・『ヨーゼフ・メンゲレの逃亡』

 オリヴィエ・ゲーブ、高橋啓訳

 

 アウシュヴィッツで「死の天使」として恐れられたヨーゼフ・メンゲレが、戦後アルゼンチンわたりそこからブラジルで死を遂げるまで南米各地をさすらった逃亡の日々を丹念な取材をもとに小説仕立てで語ったもの。

 語られるメンゲレは、物語のような悪の超人ではなく、エリート意識に凝り固まって鼻持ちならず、長い逃亡生活で神経すり減らしてゆく俗な人物としてのメンゲレである。逃げ続けられたのも裕福な実家の支援があったればこそで、捕まえられなかったのも緊迫する中東問題の方がモサド的にも大事だったという身もふたもない現実が語られる。そもそもこの小説事態が敢えてみもふたもない筆致を選択したように思えるが、そうやってナチ関係者の美化をおしとどめる意図があるのだろう。

 アルゼンチンに渡ったナチ関係者についても詳細に記されている。ここで登場するエース・パイロットがとんでもなく有名な人だと後から知ったよ。



・『ピネベルク、明日はどうする⁉』

 ハンス・ファラダ、赤坂桃子訳


 ワイマール共和国末期の大失業時代、恋人の子羊ちゃんを妊娠させたことをきっかけに結婚を決意したピネベルク。しかし、ピネベルクの母は愛人をとっかえひっかえするような女性で確執があり、子羊ちゃんは長女の給金がないとやっていけなくなるような貧しい労働者の娘。共に両親の財力はあてにならないので、自分たちだけで理想の家庭を作り、維持しなければならなくなる。そんなことは愛さえあればなんとかなると思っていた若い二人に、現実は重くのしかかってゆくのであった。

 百年近く前に出たドイツの小説とはおもえない、現代日本の既婚二十から三十代カップルの現実を描いたといっても通じる小説。

 コミカルで読みやすい文章で書かれているけれど、繰り広げられる物語はどこまでいっても現実、現実、現実……。ブラックな職場、ムカつく同僚、暮らしてゆくだけで飛んでいくお金、子供が生まれると愛すらすり減る夫婦生活、それでも生きねばならない苦しみとほんのさすかに差し込む穏やかな光……つらい。ナチズム台頭直前のお話かと思うと余計につらい。現実、つらい。

「この裕福なユダヤ人証人たちも、数年後には……」とか考えだすと辛さにも拍車がかかったが面白いことは面白い。ちょっとほろっと泣けたりもする。



・『逃れる者、留まる者 ナポリの物語3』

 エレナ・フェッランテ、飯田亮介訳


 エレナとリラという二人の女性を中心に据えた、恐ろしくおもしろいイタリアの小説の三巻。

 エレナが浮くとリラが沈み、エレナが沈むとリラが浮く……という運命の法則に従って、エレナが小説家のデビューを飾りリラが裕福な婚家をのがれてソーセージ工場で過酷な労働に従事し始めた二巻とは逆に、エレナが泥沼の不倫に溺れリラがコンピューター技師として責任ある仕事をまかされる立場になった所でこの巻は終わる。

 ナポリの下町を舞台に無数の登場人物が入れ代わり立ち代わりする物語にも限らず、本当にもう地獄のように面白い(ついでにストーリーも人間関係の地獄で出来上がってる感が強い)のでストーリーを勉強したい人は読むと良いものが得られると思う。



・『カッコーの歌』

 フランシス・ハーディング、児玉敦子訳。


 『嘘の木』で話題をさらったフランシス・ハーディングの邦訳二冊目。取り換え子の伝説をモチーフにしたようなホラーやミステリー風味のファンタジーYA。

 主人公は、どうやら何者かに池に突き落とされたらしいのだがその前後の記憶がすっぽり抜け落ちてる姉のトリスなのだけど、姉はなにかと入れ替わってる偽物だと言い張る妹のペンの描き方が見事だなぁと印象に残ってる。一人だけ真実を口にしている子供の言葉をだれも信じない恐怖を扱った物語って数多いけど、その子供を語り手ではなく登場人物にするとこうみえるのだなという発見も多かった。

 あとまぁ、姉妹好き、百合好きの人は読むといいと思うよ?



・『マジカルグランマ』柚木麻子


 今年の直木賞候補作。

 CMでのほんわかしたイメージで「ちえこおばあちゃん」と視聴者たちからも親しまれているシニア女優の正子。ところが映画監督だった夫が亡くなった際にこぼした本音がきっかけで大バッシングを受けてしまう。おまけに住んでいる古いだけの御屋敷は、売ることも解体することも難しいという有様。暮らしていくためだけにでもお金が必要な正子は、夫の自称弟子の杏奈とともに屋敷をお化け屋敷にすることを思いつき、実践する――というお話。

 タイトルの「マジカル」の意味は、近年提唱されている「マジカルニ●ロ」などで使われる「従順で人格者で深い知識やファンタスティックな技術をもっていたりするマジョリティにとって都合のいいマイノリティ像」を揶揄するもの。そんな現実に居もしないマジカルなおばあちゃんを演じてバッシングを受けた老女優が逆襲を開始して、彼女を思っていないステージへ運んで行く……と思わせてとんでもないオチが待っている。

 『嘆きの美女』『私にふさわしいホテル』ラインの柚木麻子作品が好きなので大いに楽しかったのでした。



・『ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか?(1・2)』

 新八角


 電撃文庫のポストアポカリプス百合SF。

 文明が滅んで、密林やそこにすむ奇怪な生物やら、マフィアやら宗教団体やらがうぞうぞするようになった東京で、美味しい料理をだす食堂を経営する子と用心棒の女子二人による冒険と美味しい料理に関するお話。

 旧年は百合ラノベをよく読んだけれど、その中で一番好みに合致していた気がするものを選びました。特に二巻がいい。女子と女子カップルが一番出てくるが、鯨とアンドロイドみたいな何かの百合というのはロマンがあってよい。



・『ピクニック・アット・ハンギングロック』

 ジョーン・リンジー、井上里訳


 オーストラリアの寄宿学校、アップルヤード学院はその日までは全く平和だった。ピクニック日和だった聖バレンタインデーにハンギングロックの巨石群を見に行った少女たちのうち四人と一人の数学教師が行方不明になるまでは。その日から学園を取り巻く運命は転がり落ちてゆく……という不思議だけど人を惹きつけるお話。

 オーストラリアの小説だけど(だからか?)、イギリス小説の伝統を引き継いでいるようなところが楽しかった。舞台が寄宿学校だからか、どことなく幸せになれなかったセーラ・クルーの物語として読んでしまう面もあった。



・『トリック』

 エマヌエル・ベルクマン、浅井晶子訳


 チェコのプラハのラビの下でうまれ、一度だけみたサーカスの奇術に魅せられて家を飛び出し、流れ流れてやがてナチス台頭かのベルリンでペルシア人の予言者として生きることになる少年の人生と、両親の離婚の危機を回避するために藁にもすがる思いである老魔術師に救いを求めたユダヤ系アメリカ人の少年の思い込みがとある奇跡を起こしたことを明らかにするまでの小説。

 好きでよく読む新潮社クレストブックスのホロコースト関連小説なわけですが、その中でもトップクラスにコミカルな書き方が笑いを誘った一作。ホロコーストの生還者である老魔術師はアル中でやりたい放題だし、アメリカ人少年のママとか行動がほとんど野原みさえだし。少年のひいおばあちゃんなど、家族がうんざりしているというのに会食の場でキャンプでの思い出話を語って聞かせるし(そういえばクレストブックスの別の小説でも、「アウシュヴィッツにいたムカつく看守」みたいなネタで固まる老人グループの話とかがあった気がする。アメリカやイスラエルでの比較的裕福なユダヤ系家系あるあるなんだろうか)、老魔術師はサイケな時代にヒッピーたちとラグジーにつかりながらトリップして収容所の過酷な思い出話をひとくさり話しては若者たちをバッドトリップに誘ったりするしで笑いの質がいちいち黒いのが大いにツボにはまった一冊でもありました。



・『ヒロインズ』

 ケイト・ザンブレノ、西山敦子訳


 夫たちの作品に実人生を収奪されたように見える、セルダ・フィッツジェラルド、ヴィヴィアン・エリオットなどモダニズム作家の妻をはじめ、アナイス・ニン、ヴァージニア・ウルフ、ジーン・リース、デュナ・ヴァーンズ、アンナ・カヴァン、シルヴィア・プラスなど、男性の作家に自分の表現物を奪われたり、正当な作家ではなく傍流の書き手として扱われてきた作家たちに大いなる共感を寄せながら書く、評伝とも評論ともエッセイとも言い難い、おそらくジャンルは小説になるんであろう本。似たような趣向だと、笙野頼子の『幽界森娘異聞』がそれにあたるのでは?

 作者がマジョリティな価値観にところどころ引っかかりをおぼえないでもないけれど、対象であるヒロインたちへの愛と一面的な文学史観への憤りが読んでる方にも乗り移ってくるような魅力ある本ではある。

 にしてもねぇ……、日本にもこういう例あるよねぇ……。嫌が応にでも島尾敏夫と島尾ミホ夫妻とか思い出すよねぇ。澁澤龍彦と矢川澄子とか、愛人の日記で『斜陽』書いた太宰治とかねぇ……と、いつの間にか作者と心の中で会話をおっぱじめる本でもあった。



・『侍女の物語』

 マーガレット・アトウッド、斉藤英治訳


 近年ネットフリックスでドラマになってたりする、ディストピア小説の名作。

 キリスト教原理主義の中でも特にカルトな一派が政権を乗っ取ったアメリカで、政府高官の子供を産み授かることのみが生存意義となった侍女の手記として語られる小説。

 ここで語られるアメリカ世界の嫌さ(実際こうなってもおかしくない可能性を感じさせるのがよりイヤ)の迫力もあるが、侍女の手記は入れ子で別種のテキストでこの世界と物語の顛末が語られるのが小説としても抜群に面白いなぁ、マーガレット・アトウッドまた読みたいなぁ……ディストピアは嫌だけど、と満足して読みお終わる。

 しかし嫌だ……あんな世の中はイヤだ……。



・『アステリズムに花束を』SFマガジン編集部編


 2018年末から2019年にかけて一部界隈で話題を呼んだ百合SFのアンソロジー。

 百合文芸コンテストで話題をさらい、第二回目のコンテストが旧共産圏での女女の話があふれかえるきっかけととなったソ連百合こと「月と怪物」も入ってます。やっぱり良い。

 話題の伴名錬さんだとか、名前だけは知ってたけれど読む機会に恵まれなかった小川一水さんの小説が読めたので自分的にはお得な一冊だった。

 ついでにハヤカワさんの百合に関しては、どれもユニークで面白いけれど私の信じる宗派とは別だなぁと思わんでもない(しかし他者の信仰は尊ばねばならないし、宗派が異なることは即ちこのみではないということでもない)、とコメントを寄せさせて頂きます。



・『大進化どうぶつデスゲーム』草野原々


 そんなハヤカワさんのお出しになった百合SFで一番ツボをついて来た作品。

 女子校の一クラス18人が、なんやかんやあって平行世界では覇権をとってる猫人類の祖先を過去にもどって絶滅させなくてはいけなくなってしまうというお話。

 便利だけど邪悪なAIをおともに過去の世界を快適キャンプするドラえもん映画ちっくな前半からがらりとかわる、問答無用のバトルパートからの大絶滅引き起こす要素がすさまじい。



・『掃除婦のための手引き書』

 ルシア・ベルリン、岸本佐知子訳


 話題を呼んでいたアメリカの小説。

 ほぼネグレクトに近い幼少期や南米でのお嬢様生活、数度にわたる結婚、掃除婦から教師まで様々な職業を転々とする、特異な人生を送った作家の短編小説集。

 アメリカ各地にいたであろう、名もなき人たちの生活が活写されていて読むとなんとなく泣けてくる。岸本さんの翻訳も良い。

 何がいい、どこがいいなどについては説明しづらいが確実に心にしみこんでくるタイプの小説集でした。



・『大きな鳥にさらわれないよう』川上弘美


 衰退した人類と、環境に適応して外見などを変化させてゆく人類らしき人々、そして人類の進化を見守るAIからなる遠い未来の地球の各時代や様々な社会の出来事を語るSF連作短編。文庫版。

 変な生き物や幽霊が喋り出すタイプの川上弘美作品のファンとしては読まざるを得なかった。川上弘美のSFだよ、読んじゃうよ、そりゃ。

 相当大きな時間の流れが、各場面を切り取るでコンパクトに語られる。そういう構成も非常に好きである。



 ――ほかにも印象に残った本はあるのですが、感想を書く作業に疲れたのでとりあえずこの辺で。他、印象深かったものをタイトルと著者名のみ。


・『むずかしい女たち』ロクサーヌ・ゲイ、小沢英実、上田麻由子訳

・『さらば、シェヘラザード』ドナルド・E・ウェストレイク、矢口誠訳

・『優雅な読書が最高の復讐である』山崎まどか

・『沼の王の娘』カレン・ディオンヌ、林啓恵訳

・『僕はかぐや姫/至高聖所(アバトーン)』松村栄子

・『蝶のいた庭』ドット・ハチソン、辻早苗訳

・『最初の悪い男』ミランダ・ジュライ、岸本佐知子訳

・『異形の愛』キャサリン・ダン、柳下毅一郎

・『藁の王』谷崎由依

・『人喰い ロックフェラー失踪事件』カール・ホフマン、古屋美登里訳

・『どこまでも亀』ジョン・グリーン、金原瑞人訳

・『手のひらの楽園』宮木あや子

・『レニ・リーフェンシュタールの嘘と真実』 スティーヴン・バック、野中邦子訳

・『世界樹の棺』筒城灯士郎


 個人的一大トピックは、『僕はかぐや姫』が復刊したことですね。あれは必読の小説ですよ。


 ベストを決めるとなると、やっぱり『コードネーム・ヴェリティ』『ローズ・アンダーファイア』のシリーズになりますね。あまりにも好きな要素ばかりありすぎた。


 そういえば元々ホロコーストやWW2がらみの小説は良く読むのだけど、2019年もとにかくやたら読んでいました。1942年のラインハルト・ハイドリヒ暗殺に纏わる『HHhH プラハ 1942年』(ローラン・ビネ、高橋啓訳)がある一点で『ローズ・アンダーファイア』とつながっていて自分の中でおおっとなりました。

 また、リトアニアでおきたスターリン粛清に材をとった『灰色の地平線のかなたに』と、ヴィルヘルム・グストロフ号の水難事故がテーマの『凍てつく海のむこうに』(ルータ・セペティス、野沢佳織訳)というYAを立て続けに読んで、季節は夏だったというのに非常に寒くなったことを思い出します。『灰色の……』の方にはシベリア送りになる主人公一家が家畜用貨車で輸送されるシーンがあったので、なにかというと家畜用貨車やトラックで輸送されてばかりいた気もした2019年の読書体験でした。


 あと、ディストピアよりポストアポカリプスの方がすきだというのは小さな発見でした。

 そして、私の宗派に近い百合を出すのは東京創元社の翻訳班だなぁとしみじみ実感しました。これからも頑張っていただきたい。



 なお、旧年は初めて訪れた文学フリマが楽しかったこともあって、積極的に小説の同人誌を買った一年でもありました。boothにはお世話になりましたよ。

 特に、百合文芸コンテストで作品を読みファンになった詠野万知子さん『サリーとアンの初恋』、殺伐百合の鬼才・橘こっとんさん『おねロリチェキスト(上)』が大変良かったのでここに記させて頂きます。



 2020年はインプットの年ときめたので、小説以外の本も読みたいですね。


 それでは本年もよろしくお願いいたします。

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うろおぼえで本を語る。 ピクルズジンジャー @amenotou

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