詩「長い冬の話」

※ 連載開始時に近況ノートで書いた詩です。本作「スノーウィ・ハンド」を象徴する主題歌のような気持ちで書きました。せっかくなのでこちらにも残しておきます。






「長い冬の話」


少女が見上げた空は闇だった

男が見上げた空も闇だった

少年が見上げた空は青かった


少女の隣にいるのは闇で

男が追いかけているものも闇で

つまりは少年が闇だ


闇のそばには光があって

だから少女は光で

男も光で

なんにもしてくれない空も明るかったのだ


思い出に積もる雪が


溶け残って氷になったのは短すぎる夏のしくじりで

転ぶ覚悟のない者は立ち入り禁止の氷雪道ができた


少年は行く

汚れなき罪を背負って


男は辿る

篤き信条を胸に宿して


少女は進む

折れぬ心を灯りにして


道が埋もれる前に

涙が凍りつく前に

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スノーウィ・ハンド 晴見 紘衣 @ha-rumi

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