ただ、君のために、桜の花を――。

 平安の時代、一人の独身貴族が一人の女性のために桜の花を巡って、奔走する物語。
 主人公はある日、ひょんなことから一人の心優しい女性と出会う。その女性は伝説上の桜の花を見たいと願っていた。主人公は女性の願いを叶えるために、友人とその桜を探訪すべく動く。
 しかし謎の翁の登場や、主人公の心の揺れによってその桜にはなかなかたどり着くことができない。
 この時代であれば、「花」と言えば梅だろうが、この作品では桜が中心になっている。言葉も現代風で、衣装や物の記述以外はとても分かりやすかった。時代物が苦手な小生でもスラスラと読みやすい作品。
 一途な冴えない貴族の主人公と、女性の関係性が桜を通して変化していくのが、情景的でした。
 時代モノ好きな方はもちろん、そうでない方にもお勧めです。
 是非ご一読ください。