第5話 いつもと違う朝

 思い出すことが辛いことが多く、亀更新です。申し訳ございません。


 翌朝は、いつもと同じ朝なのに、いつもと違う朝でした。

 遅い時間に横になったものの、殆んど眠れず……。

 六時になると主人の携帯のアラームが鳴ると、主人に懐いていた猫が鳴きながら長女を越しご飯を強請っていました。お互い、眠れなかったね、と……。

 この猫は毎朝主人をこうして起こしていました。寝るときはたいてい主人の傍で丸くなったり体の上で丸くなったり。四時過ぎになると主人をじーっとガン見して。そして、六時のアラームがなった途端、待ってましたとばかりに朝だよ、ご飯ちょうだい、起きてと鳴いてました。顔を舐めたり、甘噛みしたり。

 私が主人を起こしていたときは起床するまで三十分以上かかったのに、この猫が起こすようになってからは五分もしないうちに起きるようになりました。

 そんなことをひとしきり話したあと、娘にはもう少し休んでなさいと横になるように薦めました。


 食欲はなかったので、いつものように洗濯して、干して。その間、いつもの洗濯物の量と違うことに涙ぐんで。

 その後、玄関先で母と葬儀の相談をしていたのですが、離している間に徐々にあふれてくる物があって。気がついたらその場で泣き崩れていました。

 前日も鳴いたのですが、その時は号泣する娘達を気遣ったり、葬儀の相談や義兄や主人の会社問うへの連絡と、しなければしけないことが沢山あって、鳴くに鳴けないという状況だったのかもしれません。

 子供たちもまだ完全に起き上がっていないので、気遣うこともない。

 堪えていたものが一気に堰を切ったのかもしれません。このときになって初めて、本気で泣いて叫んでぼろぼろ涙をこぼして泣きました。どのくらい泣いてたのかも分かりません。ここまで泣いたのは、生まれて初めてなのかもしれない。そのくらい泣いてました。


 ひとしきり泣いて、落ち着いた頃でしょうか。

 主人の法名を考えたいので、生前の主人の事を教えて欲しいと葬儀をお願いしたご住職様から電話がありました。主人の事を離している間にまだ涙があふれてきて、電話の最中にも泣いてしまいました。でも、それは悲しいという感情からです。

 数時間後、いくつかの法名の候補えを提示して頂き、家族と相談しました。二つほど選び、その中から息子が選んだものを主人の法名にしました。


 その泣いた理由は加害者の親族からの電話でした。

 申し訳ないことをしました、おまいりさせてもらいたい、そんな内容だったと思います。

 でも、それを聞いた途端、怒りが爆発しました。

 親族の肩は悪くない、そう分かていても感情がコントロール出来ず、返して下さい、なんで、どうしてと電話口で叫んでいました。

 おまいり云々の返事には直ぐに応えられず、家族と相談しますのでまた電話して下さいと伝えていったん電話を切りました。

 とはいえ、ただ、おまいりさせて欲しいとだけ告げられたので、一体いつ来て貰えばいいのだろう。どこに? 家に? 斎場に? 今来て貰うの? それとも葬儀の日? と悩んでしまい、結局、折り返しの電話の時に今日はまだ考えられないのでと告げました。

 後から思えば葬儀の日程を知らせれば良かったのかもしれませんし、弟の連絡先を教えれば良かったのかもしれません。それこそ斎場の場所だけ告げれば良かったのかも。でも、このときは底まで頭が回りませんでしたし、それ以上に会いたくないという気持ちの方が強かったのかもしれません。


 そして、夕方頃でしょうか。警察から電話がありました。

 事情聴取と実況見分が終わり、供述に嘘がなく、逃走の恐れもないので加害者を釈放したと。そして、今後の流れ等を教えられました。

 加害者は、今後警察の捜査の際呼び出される、行政処分は恐らく免許取り消しになるだろう、業務上過失致死傷罪になる予定等々。

 それを聞いたとき、正直、え? っと思いました。

 もう釈放? この後、自由でいるの? 嘘でしょう? 信じられない……。

 転回禁止の場所で強引に転回したのに、危険運転じゃなく過失? 7年以下の懲役もしくは禁錮か,または00万円以下の罰金?

 主人を殺したのに、そんなに軽いの? 納得できない。なんで? どうして? 諸々の感情が渦巻いていました。


 夜には子供たちと主人に会いに行きました。

 主人は自分が死んだことを理解してないのかもしれない。もしかしたら、まだ事故現場にいるんじゃないか。そんな気持ちが強くて事故現場を通る瞬間、窓を開けて全員で主人に声をかけました。

 本当はその場所を通りたくないんですが、どうしても通らないといけません。自宅をひっこsない限りはその道を通るのかと思うと辛いし、悲しい。やりきれない。それは今現在も同じです。

 斎場ではずいぶん長い時間、子供たちと話していました。みんな、自分だけが知っているエピソードを離したり、こんなことしてた、あんなことしてた等々。話は尽きません。

 偶然なんでしょうかね。その場の電気が何度もパチパチして。

 もしかして、さっき声をかけたから主人が着いてきたんじゃないか? 今になって主人が気がついたんじゃないか? いや、まだ気づいてないかも。私たちに話しかけてるんじゃないか?  そんな事を延々話してました。

 実は、次女が午後に会いにきたらしく、その時偶然長兄と次兄夫婦が来てくれていました。暫く電話でおはなししてましたが、寝てるみたいだな、信じられない。年長の自分たちより先に逝くなんて。男兄弟は元気な間は連絡取らないものだけど、まさかこんな形になるとは等々、お話しされてました。


 ずいぶんと長い間、主人のぞばで過ごし、また明日来るねと帰宅。

 家ではまた猫が主人の帰宅を待っていました。その日、初めての食事はやはりおかゆ。家族全員、本当に食欲がでません。そして、また、その日も眠れませんでした

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交通死亡事故 突然家族を奪われて―― 琴芭 みずき @kotohamizuki

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