本作は「善良であること」を疑いなく信じて生きてきた語り手が、その信念そのものに裏切られる瞬間を、静かに、しかし容赦なく描いています。
矢を拾い、磨き、売るという行為が、祈りや慈しみと並列に描かれることで、読者は主人公の倫理観に自然と同調していきます。
だからこそ、少女の胸に刺さった一本の矢が明らかになる場面の衝撃が際立ち、言葉少なな描写が強烈な余韻を残します。
暴力を直接描かず、「手を汚していない」という自覚が崩れる過程が、非常に鋭く心を突いてきました。
静謐な文体のまま因果が反転する構成が、この物語を忘れがたいものにしています。