語り部

二年後。僕は小さな辺境の村で、武者修行の旅をしていたミーナから聞いた話も加えて語り部をやっていた。

酒場の一角に座って、旅人たちに物語を売る。

主に、勇者パーティーの武勇伝。

「そして勇者レオンは、魔王の胸を貫いた。

だが同時に、心臓を抉り取られて……相討ちとなった」

客たちは息を呑み、酒を煽る。

誰も、僕がその「中途半端な魔法戦士」だったとは気づかない。

気づかれないように、僕は淡々と語る。

レオンのことすら、遠い英雄のように。

ある夜、酒場の扉が重く開いた。入ってきたのは二人。

賢者となったセリアと、片腕を失ったガルド。

セリアの瞳は虚ろで、かつての優しい光は消えていた。

ガルドは、失った腕の代わりに古い盾を背負っていた。

「……リエル」ガルドの声は掠れていた。

「全部、知ってるんだろ」僕は黙って頷いた。

セリアが、震える手でテーブルに触れた。

「私……あの時、反対しなかった。

自分が賢者になれば、魔法戦士の席はなくなるって……勝手に思ってた。

でも、本当は。

リエルがいてくれたら、勇者は……レオンは……」言葉が途切れる。ガルドが苦笑した。

「俺だってそうだ。

お前がいたら、セリアは回復に専念できた。

俺は前衛に集中できた。

レオンは……ハーレムパーティーを作りたかっただけかもしれない。

でも、あいつは本気で俺たちを守ろうとしてた。

それなのに、俺たちはお前を切り捨てた」

僕は静かにグラスを置いた。

「もう遅いですよ。

僕が居れば生き残ったかどうかなんて、たらればでしかない。

レオンは魔王を倒した。

それが、結果です」

セリアの目から、ぽたりと涙が落ちた。


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