桃太郎。
桃から生まれた子どもが、犬・猿・雉を仲間にして鬼ヶ島へ向かい、悪い鬼を退治して宝を持ち帰る――そんな勧善懲悪の昔ばなしとして、多くの人が幼い頃に触れてきた物語です。
正義は迷いなく正義で、鬼は疑いようもなく悪でした。
本作は、その「当たり前」に問いを投げかける作品です。
物語はまず、私たちが知っている桃太郎の輪郭をなぞるところから始まります。
飢饉に苦しむ村、食料を求めて旅立つ若者、鬼退治という名の戦い。
一見すると、どこまでも昔ばなしらしい展開です。
しかし読み進めるうちに、「鬼」と呼ばれる存在の姿が、少しずつ違って見えてきます。
誰が正しく、誰が悪いのか。
その線引きが、立場や時代によって簡単に反転してしまう。
「正義の数だけ、鬼は増える」
このキャッチコピーの意味は、読み終えたあとにじわじわと沁みてくるはずです。
昔話は、成長してから読み返すと、思わず首をかしげてしまう場面が意外と多いものですが、本作はその「え?」という感覚を形にしたものかもしれません。
考えさせられる、大人向けの一作です。