『通知は、消さないでください』

本城 翼

第1話:通知

スマートフォンの画面が、暗いまま震えた。


 音は鳴らない。

 振動設定は、確かにオフにしてある。


 それでも、桐島遥(きりしま はるか)は気づいた。

 机の上に置いた端末が、「今、触れ」と言っている。


 ロック画面を点ける。


 通知は一件。


 ――アプリ名は表示されていない。


 ただ、通知本文だけがある。


 > 未送信のメッセージがあります

 > 今は削除しないでください


 文字サイズは、

 OSの設定どおり「中」。


 フォントも、見慣れたものだ。


 なのに、

 その文章だけが“OSの外側”にある感じがした。


「……未送信?」


 遥は独り言を呟き、

 通知を長押しした。


 通常なら、ここで選択肢が出る。


 ・通知を消去

・通知設定

・このアプリをミュート


 だが表示されたのは、ひとつだけ。


 【表示】


「……は?」


 設定画面にも飛べない。


 消すこともできない。


 選択肢が、

 最初から一つしか用意されていない。


 指が、画面に触れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る