ビビッド☆ロック
てんちょ
序章Sign〜音葉編〜
朝日が差し込む部屋で、音葉は登校の準備を進める。
サラサラの金髪、ミディアムヘアーをサイドテールで纏め、音符を模したヘアピンで前髪を留める。
第一ボタンを締めてリボンを着け、鏡で確認。
「うん、おかしいとこ無いよね?」
自問自答して小さく頷く。
ローファーを履き、母親に声を掛け出発。
玄関を出てお気に入りのヘッドホンを着け、大好きなバンドの曲を爆音で再生する。
音葉の"いつも通り"のスタイルだ。
外界との接触をシャットアウトして、自分のパーソナルスペースを作る。
いつからか定かではないが、気づいたらこのスタイルが音葉にとってのスタンダードとなっていた。
元々が引っ込み思案で、他人と関わるのが苦手である彼女が素を出して話せるのは、家族かよほど信頼のおける親友ポジションくらいである。ちなみに親友と呼べるほどの関係性を築いた人は残念ながらいない。
無意識に鼻歌を歌いながら桜が舞う並木道を通り校門を潜る。
新学期、晴れて今日から2年生である。
普通なら新たな友人を作るキッカケとなるクラス替えというイベントに胸を躍らせるところだが、音葉は陰鬱な顔で「静かな人が隣でありますように…」と祈っていた。
始業式が始まり退屈な…いや、ありがたい話をボーッと聞きながらふと思い出す。
「新入生…軽音部入るかな…」
音葉の所属する軽音部は元々少人数ではあったのだが、最上級生の先輩達が卒業してしまったため現状は音葉以外には今年からの新部長、新副部長しかいない。
「でも、さすがにいないよねぇ…」
少し期待はしてしまうが現実的には望み薄と結論付ける。
というのも、現代の音楽は多様化と複雑化が進みすぎて気軽にやれるような難易度ではないのだ。
今の若い世代は自分の知ってるトレンドの曲をやりたいのであって、知らない世代の古臭くてよくわからない曲をやりたいとは思わないのだ。
そしてそのトレンドの曲は演奏難易度が高いか、複雑な為に再現不能かのどちらかだ。楽器を初めて持つ初心者が手を出せるわけもなく、仮に手を出したとしてもすぐ挫折するのが関の山というのが実情だ。
さらに言えば、今の音楽は聴くのも演奏するのもネットが主流の時代。
部活動やサークルのメンバーと気を遣いながら無理に合わせるより、個人で演奏している姿を上げるほうがずっと気楽であり、自分のやりたい曲をやりたい時にやれる等メリットが多いのだ。
そういった時代の移り変わりもあり、敷居の高くなった軽音部は廃れていた。
まぁ、新入部員が来たら来たで音葉は上手く喋れないので困る。ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ先輩面できないのが残念だという気持ちはあるが。
そんな事を考えていると始業式がちょうど終わる。
新学期の初日は始業式と軽いホームルームだけで終わるため、早めの帰宅となった。
帰り道の途中、音葉のサイドテールを風が優しく撫でる。
何か起きそうな、そんな予感を乗せて。
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