第3話 連との再会

コーヒを片手に歩いていたら、俺の目の前に連が歩いていたんだ。あいつまだあきらめてなかったんだな。それがうれしくて、つい助けたくなったんだ。それで俺の編集室にに呼び込んだ。俺は才能を世の中に送り出すために、漫画の編集者になったのだ。

「俺はお前が描く漫画が好きなんだ。救われたんだ。俺のあの時期にお前が書いてくれた漫画がなければ俺は今頃・・・」

死んでいたもしれない。なんどか橋から飛び降りようとした。けど、あいつの漫画を思い出しては死ねなかった。俺はあいつの漫画に心を動かされて、救われていた。親や親戚、周りの人には良くも悪くも期待されて生きてきた。そのせいか、俺の生きる道は狭く、一本道だった。いい成績、いい大学、いい会社。必死に勉強をして、周りに合わせて笑って、好きでもない人と一緒にいた。そんな生活をしていて、唯一の救いは彼の漫画だった。もちろん家には漫画を置くことができなかった。だから彼の漫画だけが唯一の救いだった。友達の作品だと言ったら、親も捨てることもなったのだから。そんな日々を続けているうちに卒業式になっていた。その日俺はスピーチをした。

「私の夢は、才能を気づかずに持っている人々がその自分の才に気づき、それを正々堂々と輝かせるようにする場所を提供することです。そのためにこれからも頑張りたいと思います。」

と簡潔に言い、終わらせた。スピーチを終わらせた後、司会者がありがとうございました、という時に俺は、連hの方に目が行ったのを覚えている。ただ、その日、連と喧嘩してそれ以来口もきかないまま会えなくなってしまった。そしていま、やっと再開することができた。

「俺と組めば、お前もすぐデビューして、有名になれる。」

と、今の彼の眼を見つめた。が、帰ってきた言葉は予想外だった。

「俺はいつもお前がうらやましかった。いつも全てがうまくいって。大した苦労もなく!俺なんか・・・」

え?俺、何か言ったか。よく見ると連の手は震えていた。そんな連を見て、俺椅子から立ち上がり、はとんでもないことを返してしまった。

「何言ってんだ!?俺は確かにあんまり苦戦せずに生きてきたかもしれない。けど、お前はいつも好きを追ってた。俺からしたら、それがどれだけ、羨ましかったか。お前はわからねぇだろ?好きなことがなくて、できなくて、それでも幸せだと信じるために頑張って一日一日過ごしてんだわ。お前にはこの苦しみがわからねぇだろ!周りに愛称笑いで人に合わせて、ご機嫌とって。やりたくもないこともやって。決められてる狭い世界でいきてんだ。俺は。」

そんなこと、こいつのせいなんかじゃないのに、俺は・・・

「ふっ。俺がうらやましいだと?好きを追いかけたこともないお前に、そんなこと言われる筋合いはねぇよ。好きを生きるってどんだけつらいことか?全てを犠牲にして、好きなこと否定されて、努力は笑われ、それでも好きを信じてやり続けることのつらさが。なんでもできて、顔もよくて、仕事もできて、いつもあんたの周りには人がいた。頼られて、頼っていつも楽しそうなお前が!俺は追いかけるたびに夢も人も離れていったんだ。まるで真逆だな。」

何もいいかえせない。確かにその通りだ。けど俺は、そのせいで、自分の道を選べずにいた。まさに、操り人形、ロボットのようだった。そうか、俺は自分が思っていたよりもこいつが羨ましかったんだ。今わかった。これが俺たちの中ですれ違っていたことだったんだ。それに気づいたとき、俺は膝から崩れ落ちてしまっていた。頬には何か濡れた感覚があった。

「ごめん、颯来。そんなつもりは・・・」

と優しく連は話しかけてきてくれた。

「いいんだ。俺だ。俺のせいだ。すまん。俺のせいで、お前との仲も・・・全部、俺のせいだ。」

と俺は目からこぼれそうになる涙を手で拭いながら、震えた情けない声で口にした。その瞬間、連の目も涙で溢れていた。 俺たちはお互いを見つめながら、フッと、ニカっとした笑顔を見せた。

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