第5話

 毎日妻と嫁が入院継続に必要なものを持参して見舞いに来た。それが義務であるかのように嫁が車で妻を連れてきたのだ。この二人しかあなたの同居人はいなかった。

 あなたには三人の子がいた。長男、長女、二男だ。あなたは家族に対しては傲慢だった。暴君だった。あなたが決めたルールに則りあなたたちの子は厳しく躾けられた。妻は黙ってあなたの支配を受け入れた。

 やがてあなたの子たちは成人すると長女、二男と順に家を出た。長男はあなたのしつけが奏功したのか家を守るためにあなたのもとに残り、あなたの知人の娘を嫁にとった。

 長男の嫁は物静かで従順であなたの妻に似ていた。違うところがあるとすればよく本を読むところだっただろうか。あなたはコレクターのように本をたくさん所持していたが嫁はその本を暇さえあれば読んでいた。

 しかしそれであなたと嫁が意思疎通を図ることはなかった。長男と嫁の間にこどもはいない。長女と二男がそれぞれ伴侶との間に二人ずつ子をもうけたのとは対照的だった。家を出た長女と二男はあなたのいない世界を知って自由気ままに生きたのだ。

 あなたの家にはあなたに従う者だけが残った。その長男も四十代に入ったところで病に倒れ亡くなった。今、あなたの同居人は妻と嫁だけだ。

 暴君と二人の従者。そんな生活が十年は続いた。嫁も五十になっていた。

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