7話「噂は刃より先に届く」

シャブルイを離れてから、街道に人影が増え始めた。

行商人、傭兵、巡礼者。

どいつもこいつも、同じ方向へ向かっている。


日「……やっぱり、多いですね」


墨「タブール行きか」


日「ええ。最近は特に」


墨「最近?」


日丸は、少しだけ声を落とす。


日「“心を斬る剣士”の噂、聞いたことあります?」


墨「……初耳だな」


日「派閥をまたいで戦う異端。

 魔物も人も、殺さずに“壊す”って」


墨「悪趣味な言い方だな」


日「でも、噂ってそんなものです」


すれ違った傭兵たちの会話が、風に乗って届く。


傭兵A「聞いたか?あの闘技場に、変なのが出るらしいぞ」


傭兵B「心を覗くとかいうやつだろ?気味悪ぃ」


傭兵A「しかも、悪魔派の残党を斬っても殺さなかったらしい」


墨「……尾ひれ付きすぎだろ」


日「噂は、生き物ですから」


さらに先。

荷車を引く商人が、酒瓶を揺らしながら笑っている。


商人「タブールは今、荒れてるぞ」


墨「どう荒れてんだ?」


商人「“正義”が増えすぎた」


日「……正義?」


商人「戦女神の名の下に、誰もが“裁く側”になりたがってる。闘技場も、最近は妙だ。勝ち負けより“理由”を求める」


墨「理由?」


商人「そいつを倒す“大義名分”ってやつさ」


商人は肩をすくめ、去っていく。


日「……嫌な街ですね」


墨「昔からだろ。力が集まる場所ってのは」


日「でも」


日丸は、ちらりと墨染を見る。


日「噂の人が来るとなったら、余計に」


墨「俺じゃねぇっての」


日「名前は出てません。でも特徴は……」


日丸は、墨染の左腕に視線を落とす。


墨「見るな見るな」


日「……タブールに入ったら、目立ちますよ」


墨「だろうな」


遠く、白い塔群がはっきりと見えてくる。

戦女神の都、タブール。


そこではきっと、

噂が本人より先に、待っている。


墨「ま、噂に会いに行くわけじゃねぇ」


日「じゃあ、何しに?」


墨「……自分の立ち位置、確認しにな」


墨染は、歩みを止めなかった。


墨「…そういやお前はなんでそんな噂を知ってんだ?」


日「私は新聞を読むタイプなので!」


…そういやそんなもんもあったなぁ

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