黒刀(クロキカタナ)

なきぱま

第1章:ロクデナシの心

1話「出会いは最悪、だが悪くない」

俺の名前は墨染(すみぞめ)。

しがねぇ旅人をやってる。


気の向くまま歩き続けた結果――森で迷った。

近くに村の気配もねぇ。いやはや、やっちまったな。


嘆くのもそこそこに、少し遠くから叫び声が聞こえる。

反射的に足がそっちへ向いた。


はぁ……この世界も捨てたもんじゃ――

って思った瞬間、訂正したくなった。


目の前で、ガキが複数の魔物に囲まれてやがる。

泣き叫びながら、必死に後ずさってる。


ま、助けちまうしか道はねぇよな。


?「いやぁぁぁぁぁ!! たすけてぇぇぇぇ!!!!」


やかましい悲鳴を横目に、俺は角の生えた猿みてぇな魔物を睨む。

左腕の義体に力を込め、黒い刀を構えた。


刃が鈍く唸り、次の瞬間――ズゴッ。


墨「……っと」


脳みそを一撃で潰す。

倒れた魔物は、ぴくりとも動かねぇ。


墨「意外と脆かったなぁ。魔物派も格が落ちたもんよ」


残りの連中も逃げ散っていった。

森に静寂が戻る。


?「あなたは……?!」


助けたガキが、目を丸くしてこっちを見る。


?「……誰ですか?」


ズコー!

心の中で盛大にコケた。


名乗らずともわかるぐらい有名になったのか? と思ったが…

その反応かよ。


俺の心境などお構いなしに、ガキは深々と頭を下げた。


?「とりあえず助けていただいてありがとうございます!

 実は派閥を追放されてしまって……」


――追放。


その言葉に、思わず眉が動く。

派閥を追放されるってのは、つまり死刑宣告だ。


後ろ盾はなくなり、誰からも守られず、

憎まれ、狙われ、食い物にされる。


それでも、こいつはまだ生きてる。


?「いやはや、こう見えて私、好奇心が強い方でして……

 禁忌とされる他派閥の情報を調べていたら、ポイって……トホホ……」


好奇心は猫をも殺す、ってやつか。

実際にこんな目に遭ってるやつ、初めて見たわ。


墨「……はぁ」


俺は頭をかきながら溜息をつく。


墨「あー、行く宛がねぇなら一緒に行くか?

 助けたガキがすぐ死ぬのも後味悪りぃし」


それに――

見たところ、知識派だ。役に立つ。間違いなく。


同時に、面倒の種にもなりそうだが。


?「いいんですか?! ぜひお願いします!」


即答かよ。


なんやかんやあって、その日は簡単なキャンプを張ることになった。


火を囲みながら、ガキ――いや、こいつが口を開く。


?「そういえば、あなたの派閥はなんですか?

 私に優しくしてるところを見るに、全穏派(ぜんおん)ですか?」


墨「いや……実は」


一瞬、言葉を濁す。


墨「俺も無所属みてぇなもんだ」


?「え?」


ガキ――日丸(ひまる)は、俺の左腕をじっと見た。


日「でもその腕……よく見たら科学派の義体ですよね?!

 しかもその武器、黒い刀の形した鈍器……

 まさか、それ武闘派の装備?!

 え、え、意味がわかりません!!」


あー、バレた。


墨「そういうとこ、よくねぇと思うけどな」


日「さすがですね! 禁忌の塊じゃないですか!」


墨「この関係は明日までだぜぇ」


日「そんな!?

 私がいなきゃ森を抜けられないじゃないですか!」


墨「…それはズルってやつだぜ……キンキちゃん」


日「誰がキンキちゃんですか!

 私の名前は日丸ですぅぅぅ!!」


森に、情けない叫び声が響いた。


――こうして俺は、

面倒で、うるさくて、だが放っておけない相棒と出会った。


この出会いが、

やがて世界の歪みを暴くことになるとも知らずにな。

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