プロローグ

──あの日、世界が少しだけ変わった


あの日のことを思い出すと、胸の奥がじんわり熱くなる。


静かで、整っていて、何も乱れない。

そんな世界で生きてきた俺の前に、

風みたいに現れた子がいた。


木の上で震えていた小さな子猫。

助けたいのに、どうしても手が届かなくて。

情けないほど立ち尽くしていた俺の横を、

ひとつの影がすっと通り抜けた。


名前も知らない少女。

でも、あの瞬間から、

俺の世界は静かではいられなくなった。

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