第3話 10月23日 久美と真花の会話

「ちょっと、真花」

「なに? ピアノの練習なら今からするって」


「違うわよ。昨日の手紙の件だけど」

「手紙?」


「あなたがお姉ちゃんの部屋から見つけたっていう手紙」

「あー……、あの気持ち悪いやつ? お姉ちゃん、いじめられてるの?」


「そうなの⁉」

「知らない。でもあんなのがあるってさ。誰かから嫌がらせでもらったんじゃないの?」


「あれ、佳花のゴミ箱に捨てられてたのよね?」

「そう。昨日も言ったじゃん。お姉ちゃん、ここんところずっと部屋でなんか喋っててさ。私、こっそりママにケータイ買ってもらったんだって。ずっる!って思ってさ」


「買ってないわよ」

「でもそう思ったの。だから探して証拠を突き付けてやろうって」


「それでごみ箱を見たら、この手紙があったのね?」

「うん」


「あんたのクラスでもこんなの回ってるの?」

「回ってないよ。ってかさ、これ、変な手紙だよね」


「そう……ね」

「お姉ちゃんの学年ならもっと漢字使えばいいのに。なんでひらがなばっかなの?」


「……小学校全体ではどうなの? こういう手紙を回しちゃいけません、みたいに全校集会とかなかった?」

「ないよ。てかさー」


「ん?」

「そんなに気になるならお姉ちゃんに直接きけばいいじゃん」


「……それは、別に」

「私が聞いたげようか? お姉ちゃんの部屋で変なごみみつけたんだけどさー、お姉ちゃん、いじめられてるの?って」


「余計なこと言わないで」

「なんで。気になるじゃん」


「いいのよ、もう。ママは知り合いの人に尋ねることにしたから」

「知り合い? こんなのに詳しい人いるの?」


「さあね。それより、佳花はいまでもなんかこう……部屋で話してるの?」

「話してるよ」


「誰と」

「私が知りたいよ! 夜にボソボソボソボソ……。気になって寝られないんだから!」


「夜って……何時ぐらい?」

「まちまちだよ。部屋に入ってすぐのときもあるし。私がトイレに起きて、さ、また寝よーって思った時に始まったりとか。あ!」


「な、なによ」

「お姉ちゃん、ユーチューバーとかしてんじゃない⁉ 夜中に配信とか!」


「バカなことを言って……。スマホもパソコンもないのにどうやるのよ」

「学校からもらったタブレットある!」


「あれは制限がかかっててそんなのできない」

「そうなの?」


「……そう、いまでもなんか話してるのね……」

「今度壁に耳当てて聞いてみようか?」


「結構よ」

「なんで? ママも気になるんでしょ?」


「それより、いまからピアノ練習するって本当? ママが聞いてあげる」

「うげー。いいよ! ひとりでやるほうがいい!」


「そうやってサボろうとして! あんたには才能があるんだから!」

「サボんないし、才能もない! ……あ! ほら、お姉ちゃんが公文から帰ってきたよ!」


「……まったく、この子は。ちゃんと練習しなさいよ」

「はいはーい」


「はい、は一回! ……あ、佳花、おかえり。今日の公文はどこまで進んだ?」

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