東雲の王子さま
東雲の王子さま
「ねえ見て見て!これ
そういって王子様こと
「でもさ、みんな祷夜先輩のこと狙ってるんでしょ?祷夜先輩、なんで誰も選んでないんだろうね?」
美緒は深く考え、空を見上げた。私も同じように目線を追いかけると、眩しさで目がくらんだ。美緒はさらに考えを巡らせるべく今度は考える人のポーズをとった。コミカルな人間だと思っていると「きっと、みんな自分の彼女だと思って平等に愛してるんだよ!」ととんでもない答えがでてきたのでつい笑ってしまった。なんで笑うのと怒る彼女の後ろで人混みができていた。人混みの中から黄色い悲鳴が漏れ出ていた。
「なんだろあれ、行ってみよ!」
そういって私の手を引き美緒は走り出した。人混みをかき分け中心部分にたどり着くとそこには
「朔夜先輩…?」と呟くと横から三年生の先輩が当然だ、と言わんばかりに鼻を鳴らした。
「新入生は知らないかもしれないけど、この学校には二大ヒロインがいるの。一人がみなさんご存じ、御剣祷夜。演劇部の部長で役者としてのスカウトもかかっていると聞くわ。そしてもう一人、光には影がつきもの。文芸部の部長、御影朔夜。彼女は容姿端麗でおしとやか。だけれど文芸部のうわさや彼女の口調から高嶺の花として君臨しているわ」
興奮気味に語る彼女は「二人を同時に見られるなんて!」と感動していた。ふいに美緒が横から口をはさんだ。
「どうして二人一緒にいるところがこんなに話題になるんですか?」
そうするとまた鼻を鳴らしながら語り始めた。
「彼女たちは幼馴染なの。それに、誰よりも静寂を求める朔夜さんと、愛を求める祷夜さんは相性が悪くてね、それがとてもいいカップリングなのよね!ほんと、尊いわ~!」
本人たちの好き勝手にさせてやれと思ったが黙って適当に頷いた。朔夜が不意にこちらに気づき厳かに手を振る。私が手を振り返す前に、観衆が湧いた。この盛り上がりは予想していなかったのか、祷夜が急ぎ朔夜の手を取り踵を返す。その姿はさながら騎士だった。
「なんなんですか、昼のあの盛り上がり方」
朔夜は紅茶を口に運び、静かにデスクに置いた。
「わたくしにもわかりませんわ。わたくしと祷夜のカップリングの何が面白いのか…民衆とは奇妙なものね」
「あ、本人もそのぐらいの温度感なんですね。そういえば今日の昼はなんで二人で集まってたんですか?」
「あなたは今日ご友人といたわね。なにか理由があるのかしら?」
その質問は、ただの友達といるのに理由が必要なのか、とも聞こえた。
「ね、私祷夜ファンクラブに入っちゃった」
嬉々として報告する美緒に、なにそれ、と返すと一定の年学費ごとにサービスを受けられるファンクラブ、と説明された。
「やばいホストじゃん。絶対やめた方がいいよ」
「でもでも!最高プランの年額五千円コースだとフォロバしてくれるんだよ?絶対お得じゃん!」
年額五千…高いのか低いのか分からないが、年相応の値段なのだろうか?そう思いながらスマホでアイドルファンクラブの平均を調べようとしたところ、インスタの通知が。
「1件の新規フォロワー Touya._.Miturugi」
背筋が凍り付いた。もしこれが本物なら私はそのファンクラブとやらに処刑されるだろう。焦って画面を操作すると、つい承認してしまった。
「朔夜先輩、これって御剣先輩のアカウントですか?」
そう聞くと朔夜は私の横に座り、画面をしっかりと観察しはじめた。次第に目の動きは激しくなりとうとう私からスマホを奪い自ら操作をし始めた。
「フォローしているアカウントも、アーカイブもすべて本人のものですわね…」
そういって朔夜は私の目を怪訝な表情で見つめだした。
「まさかとは思いますけれど、ファンクラブに入会なさったの…?」
「いやいや、してないですよ、あんな怪しいクラブ!だから怖いんです。これ、ファンクラブの人にばれたら処刑されますよね、絶対」
「ええ、磔にされた挙句、校内をバイクで引きずり回されるでしょうね…」
「こわ、どんな野蛮人集団なんですか」
「あなたは愛の怖さを知らないから冗談だと思えるのよ…」
そういった朔夜は過去のファンクラブの騒動を語り始めた。駅前で祷夜がガテン系にナンパされたとき、その場にいたファンが全員先陣を切りナンパ男を病院送りにしたとか、サッカーの授業で祷夜の顔にボールを当てたファンが自ら命を絶った、とか。
「なんでいまだに存在してるんですかそのカルト集団」
「わかりませんわ。けれど、祷夜が根を回しているわけではないようですの」
不意に朔夜のスマホに着信が入った。朔夜が部室を留守にしたとき私にも着信が入った。発信元は、御剣祷夜だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます