死界のシェア#処刑場跡で撮ってみた 〜繋がれた家族〜

うなぎかご

第1話 夏休みのキャンプ

「健三さん、ありがとうございました! 荷物、あとで自分たちで運びますね!」

 守屋 みなみ(もりや みなみ)が、最新型ミニバン『Grand-Xcalibur』の重厚なスライドドアを開け、元気よく飛び出した。

 彼女は、肩で切り揃えたボブカットがよく似合う、三人のムードメーカー的存在だ。

 警察官である父、義明譲りの健康的な小麦色の肌に大きな瞳が特徴的。

 裏表のない明るい性格で、誰からも好かれるが、場の空気に流されやすい危うさも持っている。

 キャンプ場に到着し、お昼ごはんを済ませた3人は、健三さんと瑠璃のお母様、佐伯佳苗が手際よく大型テントの設営を始めている隙に、近くの散策へ出かけた。

「ねえ、あっちの方に何かあるよ。行ってみよう!」

 小野寺 結衣(おのでら ゆい)が、キャンプ場の区画から大きく外れた、薄暗い獣道を指さした。

 彼女は、緩くウェーブのかかった長い髪を高い位置でポニーテールにしている。

 整形外科医の父、誠一に似て、すっと通った鼻筋を持つ端正な顔立ちだが、その本質は極めて好奇心旺盛で怖いもの知らずだ。

 SNSのフォロワー数も多く、「映え」のためなら少しの危険も厭わない、このグループの先導役である。

「あんまり遠くに行くと怒られるよ……?」

 佐伯 瑠璃(さえき るり)が心配そうに振り返る。

 彼女は、腰まで届くストレートの黒髪を丁寧に手入れしている、清楚な雰囲気の美少女だ。

 辣腕弁護士の父、健三譲りの思慮深さと慎重さを備えており、いつも二人を止める役回りだが、結局は親友たちを見捨てられずについて行ってしまう「お人好し」な一面がある。

 時刻は13:00。

 真夏の太陽は容赦なく照りつけ、3人の影を足元に短く、黒く、まるで逃げられない鎖のように縫い付けていた。


 村外れの道を進むと、不自然に生い茂った杉林の入り口に、苔むした古い石段がひっそりと隠れていた。

 そこだけが、まるで周囲の熱気をすべて吸い込んでいるかのように、肌寒くひんやりとしている。

「みなみん、ルリルリ、見て、秘密の階段。登ってみようよ! 絶対いい写真撮れるって!」

 ユイの好奇心に抗えず、みなみと瑠璃も後に続いた。

 一段、二段と登るたびに、キャンプ場の子供たちの歓声や健三さんたちがペグを打つ乾いた音が遠ざかっていく。

 代わりに、耳の奥にこびりつくような「ジジジ……」という蟬時雨が、重く、粘り気を持って彼女たちの精神を圧迫し始めた。


 丘の頂上にあったのは、屋根が腐り落ち、内部が剥き出しになった小さな祠(ほこら)だった。

 そこがかつて、村の禁忌とされた凄惨な処刑場跡地であることなど、都会の私立女子中学生たちは想像もしない。

「これ、超ヤバくない? 心霊スポットっぽくて最高! エモい!」

 ユイがすぐさまスマホを構え、ルリルリを強引に引き寄せて、祠を背景におふざけの自撮りを始めた。

 瑠璃は困ったように微笑み、みなみんも苦笑しながら、二人を数枚撮影した。

 祠の深い影、不気味に苔むした岩、そして、それらとはあまりにも不釣り合いな、少女たちの弾けるような無邪気な笑顔。

 合計10枚。

 後の地獄へと繋がる「証拠写真」が、取り返しのつかないデジタルデータとして、静かに保存された。


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